株主総会2025#22Photo:Diamond

電子部品のプリント基板に使われる「ソルダーレジスト」で世界シェア首位の太陽ホールディングス(HD)が6月21日に開く株主総会で、佐藤英志社長が解任議案を突き付けられている。同社の業績は、佐藤氏のトップ就任後に右肩上がりが続いてきた。にもかかわらず、佐藤社長の再任を巡り、アクティビストや資本提携先などがこぞって反対に回る異常事態に陥っている。なかでも、関係者を驚かせたのが、佐藤社長に経営を委ねてきた創業家が再任に反対する意向を示したことだ。特集『株主総会2025』の本稿では、ダイヤモンド編集部の取材に応じた創業家の見解を明らかにする。(医薬経済オンライン 吉水 暁、ダイヤモンド編集部 金山隆一)

太陽HD社長解任の委任状争奪戦
アクティビスト、DIC、創業家が参戦

 太陽ホールディングス(HD)を巡るプロキシーファイト(委任状争奪戦)の号砲を鳴らしたのは、アクティビスト(物言う株主)として名高い香港のオアシス・マネジメントだ。オアシスは5月7日、佐藤英志社長の再任の反対を盛り込んだ株主提案を公表した。タイの現地法人で起きた不祥事の隠蔽(いんぺい)疑惑や肝いりで参入した医薬品事業で出した100億円以上の損失を挙げ、「ガバナンスがなっていない」として、佐藤社長に不信任を突きつけたのだ。

 両者のつばぜり合いが続くなか、情勢を一変させたのが太陽HDの筆頭株主であるDICがオアシス側についたことだ。世界有数のインキメーカーであるDICは、後述する理由から17年に太陽HDと資本・業務提携を交わし、約20%を持つ筆頭株主の地位にある。それが突如手のひらを返し、佐藤社長の再任反対に回ったのだ。

 さらに約10%の株式を持つとされる創業家もこれに同調したことで、株主の4割近くが反対に回る計算で、信任率98%で再任された昨年とは一転、佐藤社長はその座を脅かされる事態になっている。「関係は良好だと聞いていただけに、どうにも解せない」。同社に詳しい業界関係者は、創業家が佐藤社長の再任反対の姿勢を示したとの報道に触れた感想をこう漏らす。その上で、「佐藤社長を取り立て、経営を任せてきたのは創業家のはず。それがどうして今になって(反対するのか)」と首をかしげる。

 業界関係者も驚いた創業家による佐藤社長の再任反対の動き。そうした中、オアシス、DICと並び佐藤社長の命運を大きく握ることになった創業家の関係者がダイヤモンド編集部の取材に応じた。実は、創業家の佐藤社長に対するわだかまりは8年前に芽生えていた。ターニングポイントとなった“事件”とは。次ページで、創業家が反対に回った深層を明らかにする。