その近澤氏がアルケミストでたたき込まれたのが、SaaSビジネスの成功の秘訣「バーニングニーズを探せ」というものでした。こうした「すでに火がついて燃えさかっていて、一刻も早く消し止めたい」というようなニーズを見つけることが、やはりSaaSビジネスでは大切です。

 モノづくりをしているときに、提案時点では「いいね、こういうのが欲しかったんだよ。できたら連絡して」と言われていても、実際にモノができて営業しに行くと買ってくれなかったということは往々にしてあります。ところが、バーニングニーズを狙えば「まだモノができていなくても契約が取れる」ということが起こります。本当に燃えさかっているニーズがあれば、確実にお金を払ってもらえる、契約も取ることができるというのです。

実現可能性がある程度わかれば
「まずは売ってみる」が大事

 この「まずは売ってみる」という話は、アルケミストのようなスタートアップアクセラレーターで重視されているだけではありません。スタートアップのバイブル的ビジネス書『リーン・スタートアップ』に続く「リーン・シリーズ」の各書籍の中でも、やはり何度か出てくる話題です。

 本当につくれるかどうか分からないモノを、分からないままに売ってしまっては単なる詐欺師になってしまいますが、ある程度実現が可能だということを検証した上で、実際に契約が取れるかどうか売ってみることはできます。「本当にプロダクト化して、事業の柱として成立するかどうか」は、モノがなくても確認できるのです。

 今や多くのモノづくりや事業において、ソフトウェアは欠かせない存在となっています。私は常々「ソフトウェアの企業での内製化は大事」「プログラミングすることは大事」と言っているのですが、実は今、プログラミングをしなくても、さまざまな価値提案ができる仕組みが登場しています。流行の言葉でいうと「ノーコード」「ローコード」と呼ばれるサービスがそうです。

 現在のノーコード、ローコードのサービスでは、コードの代わりにブロックのようにプログラムの動作を組み合わせるだけで、大概のことができます。エンジニア人材が足りなくてフル稼働できない、もしくはエンジニアを採用できないという場合でも、自分で少し勉強したり調べたりするだけで、ITを活用した事業の検証ができるようになってきています。