万が一の時にすぐに使える現金が手元にないというだけではなく、運用成果が資産と完全にリンクしているため、良いときはお金が増えているでしょうが、悪いときには資産全体が減ってしまいます。資産が減っているときに現金が必要な事態が起きると、損を確定させてしまわなければならなくなるのです。

 強い投資をするには、収支のバランスを整え、生活防衛資金として生活費1年分ほどの貯金を持ち、その上で投資をするのが基本です。しかし、肝心かなめの「生活費」がなおざりになってしまっているのです。

38歳会社員、FIREを目指すFさんの場合

 FIREを目指しているという会社員のFさん(38)も、そんな投資バカと言える方でした。50歳までにリタイアできるような資産を作りたい、ということを相談に来られました。FIREを知り、投資で資産を作りたいというのです。すでに投資は始めており、さらに利益を得るにはどうしたらよいか? というのが主な相談のようです。

 私の基本は、前述のように収支を整え、生活防衛資金をもって投資をするという考えなのですが、Fさんはどうやら「FIRE=投資」「投資=大きく利益を出す」という考えのようで、家計のことには触れようとしません。

 ただ、投資にお金を回したいという気持ちはあるらしく、2年ほど前に購入したマイホームはフルローン(頭金を入れず、金融機関からの借り入れで全額まかなうこと)で購入し、枠いっぱいの住宅ローン控除の恩恵を受けています。還付されたお金は、すべて投資に回す目的です。住宅ローン控除は、年末のローン残高の1%が最大40万円(長期優良住宅等は50万円)還付される制度。借入金利が0.85%ほどでしたからそれだけでもお得感を感じますし、還付は満額受け取ったほうがよりお得で、還付金は投資の原資にもなる。良いことずくめだと感じたようです。