なかには、消費期限を延ばして以降、売り上げが大幅にアップした商品もあるという。大容量の「千切りキャベツ ビッグパック(280g)」は、前年度比で140%売り上げがアップした。

 共働き世帯が増えて「家事の時短ニーズ」が高まっている時代背景から、野菜をカットせずに使える「パッケージサラダ」市場も年率で6%伸びている、と吉田氏。

「私たちが今年2月に行った調査(※)では、約7割の生活者が『フードロス問題に関心がある』と回答しており、注目度が上がっているのも実感しています。今後、パッケージサラダを使う人が増え、我々のような食品メーカーが食品ロス削減に取り組めば、廃棄も減らしていけるはず。みなさんが利便性で選んだパッケージサラダがエコにつながっている、と感じてもらえるような取り組みをしていきたいと思っています」

※)…『サラダ白書2021』/全国の20~69歳の男女、合計2060人/2021年2月24日~27日にWebアンケートを実施

工場でのリサイクルに
尽力する江崎グリコ

 ポッキーやビスコで知られる、日本の老舗食品メーカー・江崎グリコは、3月に「Glicoグループ環境ビジョン2050」を定め、重要課題の一つとして食品廃棄物の削減に取り組んでいる。2030年には15年度比で95%を削減するのが目標だ。1990年代から食品ロス削減を推進している。

「1998年に環境マネジメントシステムの国際規格『ISO14001』の認証を取得しました。それをきっかけに、社内でも食品ロスや地球温暖化防止、環境汚染防止などへの関心が高まりました」

 そう説明するのは、江崎グリコのCSR委員会環境部会の実務責任者・田島潔氏。

「たとえば、需要と供給のバランスを取りながら、作りすぎを防いだり、新商品の量産開始に当たって生産設備をうまく立ち上げたりすることで、ムダを減らします。その上で、植物の堆肥や家畜の飼料などにリサイクルをします。そうすることで、食品廃棄物になるのを未然に防いでいます」

 工場の食品残さで作った「堆肥」や「飼料」は、さまざまな用途に使われるという。その一例が、製造子会社であるグリコマニュファクチャリングジャパンの神戸工場と、同工場に隣接する事業所内保育園「こどもぴあ保育園 神戸」での活用だ。

「『ビスコ』を生産している工程で割れたり、一部が欠けたりすることで製品にならないロスは、リサイクル業者を通じて飼料にして養豚場で生かします。その豚肉は社内食堂のメニューとして提供しています。また、チョコレート製品に使うカカオ豆の皮を肥料にして、保育園内で野菜を育てて保育園の昼食に使います。こうした取り組みが、園児たちの食育にもつながっています」

 そして、同社の取り組みのなかでは「賞味期限の表示変更」も、食品廃棄物の削減に大きな成果を上げているという。

「賞味期限を日付単位で記載すると、日付の順番通りの納品が求められます。そこで、菓子・食品カテゴリーのほぼすべての商品は『年月表示』に切り替えました。賞味期限の表示方法を年月で大きなくくりにすれば、製造や配送、販売のそれぞれの現場において日付単位で商品を細かく管理する手間を減らすことができ、物流の効率化につなげています」

 その一方で「商品によっては課題もある」と田島氏。

「賞味期限が非常に短い乳製品は、需要予測を見誤ると、すぐに廃棄予備軍になってしまいます。乳製品の廃棄を減らす取り組みを強化していますが、同時に、より需要予測の精度を上げるなど、技術力の向上も必要です」

 そのほかの施策として、数量限定の「ジャイアントカプリコ<いちご>ふぞろい品」や「冬のくちどけポッキー」など、商品として品質を満たすものをアウトレット商品として展開する。

ジャイアントカプリコ<いちご>ふぞろい品10月22日に全国の「ぐりこ・や」にて発売される、数量限定お菓子「ジャイアントカプリコ<いちご>ふぞろい品」。コーン部分の欠けや、チョコ部分の空洞が発生している不ぞろい品だという。もちろん味は店で売られているカプリコと同じ

 そして「社員一人一人が『もったいない精神』を持てば、食品廃棄物の削減がさらに進むはず」と、田島氏。

「最終的には食品廃棄物をリサイクル(飼料化、肥料化、燃料化)するのではなく、ふぞろい品のように『人の食べ物として作ったものは、すべて人が食べる』ような仕組みが理想だと考えています。社員には、食品メーカーに勤める社員としてだけでなく、一生活者の視点としても、食品廃棄物を減らす心構えを持つように普及啓発していきます」

 長年、食品ロス削減に尽力している2社のみならず、消費者である私たちも食品ロスを我が事 として捉えれば、課題の解決が近づくかもしれない。