検問で疑いがあれば、その場で殺される

 瀬谷氏によると、カブールが陥落する前後から制限は始まっていた。脅迫電話や、タリバンが街中に作った検問での尋問で、少しでも疑いがあるとその場で殺されてしまう。その様子を捉えた写真を瀬谷氏に送り、実情を訴える人もいる。

瀬谷「20年前にタリバンが支配しているときに、処刑だとかムチ打ちだとかが行われていたことを知らされて、若い人たちは恐怖を覚えています。そして今、タリバンの末端の兵士たちが暴力を当たり前のことのように行っているのを実際に目の当たりにしている。特に女性や少数民族、旧政府の関係者は直接的な命の危険にさらされ、身を隠しています」

――タリバン政府自体は否定しているものの、一軒一軒家探しをし、誰かが隠れていないのか特定していくという動きもある。

瀬谷「自分たちがどれぐらい生きていられるのかという生命の安全さえも確保できない。一生隠れて生きていなければいけないのか。世界は私たちを見捨てるのかというところで、人々の関心も世界で薄れると恐れている。誰か私たちの命を助けてほしいとか、危害が及ばないように担保してほしいというわずかな希望を持ちながら、今も多くの人々が支援を求めているという状況です」

――アフガニスタンの女性の地位はこれからどうなるのか。

瀬谷「もともとアフガニスタンは、保守的な部族社会。女性を表に出さないなどはある程度女性を守る仕組みでもあり、他国が口を出すことはないと思います。ただ、既に女性活動家などは実際に危害を加えられています。医者と教育に関しては女性が働くことを認めると言っていますが、それ以外はどういった役割を担えるのかはまだ定かではない。

 一応、国連のトップが国連にも女性が必要だと説明していて、タリバンがそれに合意したという報道がありましたが、口約束したことが今後ちゃんと担保されるのか。しかもそこで働く女性が身の危険を感じずに、しっかりと自分がやるべき仕事をできるのかということを見据えないといけない」

 今瀬谷氏が支援している一人に、ある女性ジャーナリストがいる。まだ20代前半と若く、アフガニスタンの女性たちが20年かけてようやく築いてきた自由を伝えてきたことが誇りだが、その実績が彼女の命を危うくしているのが現状だ。

なぜ希望してもアフガニスタンから脱出できないのか

――国から脱出することを希望するアフガニスタン人は多いと聞く。希望していても実際には難しい理由は?

瀬谷「8月31日までは各国の軍用機を通じて退出させようという動きがありました。ただその時点でも、空港の中に入れないということで、退避できない人たちがたくさん残されてしまった。今となってはアフガニスタンの空港は基本的に国際便が飛んでいないので、そもそも出るルートがない。周辺国から陸路で出るルートは、国境を接している国はたくさんあるのですが、その国境も閉じられている。また、隣接する各国側もアフガニスタンから難民流入を防ぐために閉ざしている。またパスポートを持っていない人もたくさんいて、パスポートを発行するオフィスも閉まっているので、そもそもパスポートがない、という状況です」