遠く離れた日本にもそのニュースは届いているが、断片的なニュースが多く、全体像をつかむことは難しい。そこで本記事では、在アフガニスタン大使館に外交官として勤務した経験があり、現在は「紛争・テロ・社会的な暴力」を防ぎ、乗り越え、共存できる社会の実現を目指す認定NPO法人 Reach Alternatives(REALs、旧・日本紛争予防センター)の理事長としてアフガニスタンをはじめ、さまざまな紛争国などで活動する瀬谷ルミ子氏に、アフガニスタンの現状について聞いた。

働く女性、少数民族、旧政府関係者などの
命が危機にさらされている

NPO法人 REALs(旧・日本紛争予防センター)の理事長、瀬谷ルミ子氏 Photo by:Rumiko SeyaNPO法人 REALs(旧・日本紛争予防センター)の理事長、瀬谷ルミ子氏。「世界が尊敬する日本人25人」(2011年・Newsweek日本版)、「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2012」(2011年・日経WOMAN)、「International Leaders Programme」(2015年・イギリス政府)に選出。著書『職業は武装解除』(朝日文庫) Photo by:Rumiko Seya

――アフガニスタンから米国が去り、タリバン政権が成立した。アフガニスタンの国民はどのような状況か。

瀬谷「現在の暫定政権は、とりあえず表明されている各大臣の職には女性はおらず、ほぼ特定の部族から成る政権になっていて、少数民族の人たちへの迫害も始まっている。タリバン自体は“イスラムの教えの範囲内”で対応するとは言っていますが、その教えの範囲自体の議論をしているところ。かつて女性の権利やそういったもの(女子教育など)が迫害されていた状況が、今後どの程度変わるのかはこれから明らかになるところではありますが、現時点では楽観視できない状況です」

――タリバンは女性の社会活動を完全に制限している?

瀬谷「タリバンの指導部は女性の権利について、今のところ『医療職と教育の分野では女性が働くことを認める』とは言っています。ただ、この20年間の間に、女性とか若者とか含めて、一世代が育つぐらいの年数をかけて自由な世界で生きてきた人たちが多いんですね。そういう人たちにとって当たり前だった、表現とか、自由に職業を選べるといったことが一気になくなってしまった。自分たちが描いていた未来がなくなり、将来自分がやろうと思っていた仕事や、こういう社会を作りたい、こういう社会で働きたいと思っていた道が閉ざされてしまっています」

――現地の人が一番恐れているのは、手に入れていた自由がなくなること?

瀬谷「実際に今現地で、特にその前政権で軍や政府、警察、刑務所の監視などの仕事で働いていた人に対しては、既に殺害や脅迫などが頻繁に起きています。女性ジャーナリストや女性活動家、もしくはミュージシャン、音楽はタリバンの教えでいうと“やってはいけないこと”にカテゴライズされています。そのため、そういうことに携わっている人たちをタリバンが写真を持って捕まえようとしていたり、当人たちに脅迫の電話がかかってきたり、実際に拘束される事態が起きています」