唯一5年で水準が減少したのが、前述の通り4つ目のIndexIV「学習・訓練」です。この動きを詳細に見ると、2018年と2019年には上昇傾向にあったことがわかります。この背景には、社会人の学び(リカレント教育)の重要性が説かれたことが挙げられます。しかし、新型コロナウイルス感染症が広まった2020年には大きく減少しました。

 5つ目のIndexV「ディーセントワーク」は、最低限保証されるべき就業条件についてのIndexです。そのため、他のIndexと比べて毎年大きな変化は見受けられませんでしたが、2020年は大きく上昇しました。前述した通り、パワハラ防止法の施行により職場でのパワハラへの抑止力が働いたこと、そして新型コロナウイルス感染症でテレワークが広まり、ハラスメントを見聞きする機会が減ったことが、影響していると考えられます。

 5つのIndexの2016年から2020年までの動きをまとめると、日本の働き方は、IndexIV「学習・訓練」を除き、4つのIndexで水準が上昇したことから、総合的に見ると前進したといえます。

 Indexの動きに加え、その構成要素であるIndicatorの動きも合わせて見ると、日本の働き方は3つの観点で進化し、次の5年に向けて新たに3つの課題が残されていることもわかりました。

日本の働き方はやはり変わった
3つの進化と残された3つの課題

 2016年以降の日本の働き方は、主に働き方改革の推進と新型コロナウイルス感染症の影響を受けて、以下に掲げる3つの観点で進化したものと分析しました。

 改正労働基準法などの施行によって、長時間労働者が減り、休日の取得率は上がり、労働時間は短縮されました。また、無期労働契約に転換できるルールの適用が始まり、非正規の処遇改善も進みました。そして、女性やシニアの労働参加が促進され、それに伴って自分の労働所得で生計を成り立たせられる人も増えました。

【進化1】労働時間の短縮化が進む(IndexIII「ワークライフバランス」)

【進化2】非正規の処遇改善が進む(IndexI「就業の安定」)

【進化3】女性とシニアの就業の安定化が進む(IndexI「就業の安定」)