「デザインがダサい」と話題になった新紙幣
実はユニバーサルデザインの結晶

 https://www.mof.go.jp/policy/currency/bill/20190409.html

 日本銀行の公式アカウントが9月1日、新1万円札のデザインをツイッターに投稿。ツイートが13万リツイートを超えるなど、大きな話題を呼びました。

 20年ぶりに刷新されたデザインへの反応として、新1万円札の肖像画が福沢諭吉氏から渋沢栄一氏へと変更されることで「諭吉1枚」といった表現が消えてしまうことを嘆く声が上がる一方で、「デザインがダサすぎ」「全体のデザインが適当に配置されたように見える」といった厳しい意見も数多く見られました。

 特に、これまで「壱万円」と漢字表記されていた部分が、細いゴシック体の「10000」とアラビア数字へと変わったことに対し、「ダサい」「違和感がある」といった声が多かったようです。

 しかし、この「10000」の表記は、実は「ユニバーサルデザイン」を目指した結果です。できるだけ多くの人が読みやすいよう、熟考した上で、視認性の高い形を採用しているのです。

 それだけではなく、新千円札のデザインと比べてみると、「10000」と「1000」の「1」の形状があえて区別されています。それによって、「ゼロの連続」を識別することが苦手な人も使いやすいよう、工夫されていることがわかります。

「見た目をきれいにすることがデザインの仕事」というイメージを持つ人が多いかもしれません。でも見た目をきれいにすることはデザインの仕事の一部にすぎません。

 見た目を整えたり、きれいにしたりすることはもちろん大切ですが、それ以上に「それがどのように機能するのか」「どう問題解決につながるのか」が大切です。

 こうした「できる限り多くの人が使いやすいようにデザインされた」という、新紙幣のデザインの意図を後で知り、納得したという人も大勢います。そういった意味では、新紙幣のデザインに関する今回の賛否は、人々がユニバーサルデザインへ関心を持つことのきっかけのひとつになったかもしれません。

集英社が「誰でも漫画家になれる」
新サービスをリリース

 https://note.com/worldmakerapp/n/n2652aa3245c6

 集英社は2021年9月5日、文章を打ち込むだけでネーム(漫画において、セリフやキャラクターの配置、コマ割りなどをおおまかに記した下書き)をつくることができるサービス「World Maker」のβ版をリリースしました。

 すでに漫画を描くためのアプリやサービスは、世の中に多く存在しています。しかし、それらはいずれも「自分で絵を描き、構成をつくること」を前提としています。

 しかし、World Makerは、自分で絵を描く必要はありません。物語の構想を文章にして打ち込むだけで、吹き出しの位置やコマ割りが自動で設定されます。さらに、60万点以上の素材の中からキャラクターや背景を選ぶことができるのです。β版を実際に試したユーザーは、わずか30分ほどで作品を作ることができたといいます。

 World Makerは、絵を描くことが苦手で、漫画を描きたくても描けなかった人や、漫画以外の表現方法を使って創作してきた人に、漫画を描くという選択肢を与え、創作の視野を広げる可能性を持っています。

 一方で、つくることができるのはあくまで「ネーム」であることがポイントです。下書きなので、気軽にSNSなどで公開し、広く意見を募ることができます。

 少々「粗い」状態でもとりあえず形にして、人からフィードバックを集めて改善することを「プロトタイピング」と呼びます。プロトタイピングは、デザインのフィールドにおいても、アイデアの価値を検証するために重宝されている手法です。

 このWorld Makerは、漫画のアイデアをまさにプロトタイピングすることができるサービス。World Makerが普及すれば、アマチュアの「漫画家」が漫画を描き、公開し、フィードバックをもらうというサイクルは劇的に早まるでしょう。

 これによって、埋もれていた才能が発見され、これまでに見たこともないようなおもしろい漫画が世に出てくることを想像すると、ワクワクしますね。

会社と社員が大事にすべき「共通の価値観」を
メルカリが採用ページで公開した意義

 https://careers.mercari.com/jp/culturedoc/

 メルカリが、会社(メルカリ)と社員が大事にする「共通の価値観」をまとめた社内向けのドキュメント「Culture Doc」を、採用ページ「Mercari Careers」内で一般公開しました。

 このドキュメントでは、企業が掲げる「Mission」や「Values」といった概念に加えて、「Foundations」と呼ばれる概念や、企業のガイドラインも公開しています。

 特にこの企業のガイドラインは、ドキュメント内でも特に興味深いものでした。一般的な企業の採用ページでは、福利厚生や報酬などを具体的に示していることが多いですが、このガイドラインには、「メルカリがそれらをどのような基準で策定しているか」という考えかたの部分が示されています。

 メルカリの社員や入社を検討している人は、より「納得感」を持って会社の制度を理解できます。また、言語化されて公開されていることで、気になるところがあれば会社へ指摘しやすいというメリットもありそうです。

 今後、こうした取り組みが多くの企業へ広がれば、より自分の価値観に適合した会社を選びやすくなるでしょう。また、企業としても、採用や企業運営のミスマッチを減らし、より組織としてのパフォーマンスを上げることができるというメリットもあると思います。多様化の時代、このようにひとりでも多くの人が自分に合った働きかたができるようになっていってほしいですね。

 以上、9月に話題になったアプリやサービスをお届けしました。次回もお楽しみに!