「アンコンシャスバイアス」の解消とダイバーシティ推進
永田 いま、多くの企業が「アンコンシャスバイアス」の解消をテーマにしていますが、御社はいかがですか?
秋山 昔から、物流会社は長時間労働や力仕事が多いために男性社員が求められがちで、女性社員が少ない傾向にありました。それで、大卒定期採用者数も以前は女性社員の割合が全体の20〜30%だったのですが、最近は40%まで増えてきています。物流業界としても当社としても人手不足ですから、女性社員にはぜひライフステージが変わっても活躍し続けてほしいと思っているのですが、実際は結婚や出産を機に退職される方が多いですね。これは、受け入れ側である我々にアンコンシャスバイアスが強くあることが原因のひとつだと思っています。
永田 特に管理職の方々が自分自身のバイアスに気づくというのは大切ですね。人事制度をいくら整えても、管理職がアンコンシャスバイアスにとらわれていると1on1ミーティングなどもうまくいかなくなる、と聞きます。
秋山 そのとおりです。まずは、受け入れ側の管理職がこれまでの感覚を見直して、個を受け入れ、多様性を大切にする文化をつくっていく必要があります。そうしなければ、女性社員は自分が活躍する姿を思い浮かべられませんし、企業として顧客目線で新たなビジネスをつくっていくこともできません。さらに言えば、物流の現場では外国人労働者、パートや派遣労働者など、さまざまな人が働いているので、ジェンダーに関するアンコンシャスバイアスだけでなく、広い意味で多様性を受け入れることが重要だと思います。受け入れ側の意識が変わっていかないと、環境は変わりませんから。
永田 アンコンシャスバイアスの解消にとどまらず、ダイバーシティの実現を目指していくということですね。実際、御社は社名変更した際にバリューを見直し、新たに“ダイバーシティ”という言葉を取り入れられましたね。2020年10月には、国連グローバル・コンパクトにも署名されています。
秋山 社会の一員として、ダイバーシティの実現を目指さないことなどあり得ません。そのための第一歩が、自らのアンコンシャスバイアスに気づくことです。気づくことさえできれば、自分自身をコントロールできるようになりますよね。今後取り入れていく“アンコンシャスバイアスを解消するためのトレーニング”は、管理職が自分自身を変えていく良いきっかけになるでしょう。「こういう言い方は避けましょう」などと表面的な言動についての指導で終わりがちなパワハラ防止の研修に比べて、より深く自分自身を見つめることに繋がりますから。管理職一人ひとりのそうした変化が、社内環境を変えていくと思っています。まとめると、1on1研修は部下のために、アンコンシャスバイアス研修は管理職が自分の身を守るために実施する予定です。
永田 経験学習という人材育成のOSをベースに、上司と部下、OJTトレーナーと新入社員の感謝の連鎖を紡ぎ、会社全体として人が育つ文化を醸成していこうとされているところ、そして、その取り組みが早期離職防止に繋がっていることが印象的でした。本日はありがとうございました。