この数カ月は投資家から物価の上昇を懸念する声がそれほど聞かれない。だが、10日に変調の兆しが見られた。米株式市場ではダウ工業株30種平均が前日比240ポイント(0.7%)安で終え、ハイテク株中心のナスダック総合指数は264ポイント(1.7%)安に沈んだ。米国債市場では、インフレ見通しに敏感とされる長期債が下落(利回りは上昇)し、米連邦準備制度理事会(FRB)の金利操作を織り込むことが多い短期債も値下がりした。10年債利回りの上昇幅は1年ぶりの大きさとなった。この日の値動きは、米労働省発表の10月の消費者物価指数(CPI)が前年同月比6.2%上昇と1990年以来の伸びを記録したことに反応したもので、投資家がインフレの上昇と向こう2年間のFRBの積極的な政策対応の両方に身構えていることがうかがえた。だがトレーダーやアナリストは、CPI統計が予想を上回った割には、相場は小幅な下げにとどまったと指摘している。