「コロナバブル」の店もある一方、
閉店に追い込まれるところも

 個人の飲み屋では、給付金・協力金を通常の売り上げ以上に受け取ることができ、「コロナバブル」を謳歌したところも少なくなかったようだ。このような事例は何件も報告されていたはずであり、制度を見直す時間はあったように思うのだが。

 自治体によっては、売上高によって支給額が変動する方式を導入したところもあったようだが、より弱者の救済に重点を置いた制度設計はできなかったのだろうか。

「給付金や協力金は、新車の購入や遊興費に使った」

 こんな話をよく耳にした。持続化給付金、家賃支援給付金、休業・時短要請協力金などの給付金・協力金は、事業主が法人の場合は法人税、個人事業主の場合は所得税の課税対象となる。

「うちは今まで1回も税務署から問い合わせがないから、今回も大丈夫だ」とは決して言い切れないはずだ。特例があった年は、税務署は対応策を練るだろうから、問い合わせが入る飲食店が今後増えるかもしれない。

 一方で、給付金・協力金をスムーズに受け取れず、困窮する店もある。地方で高齢者が営業する個人店から、人づてにこんな相談があった。

「給付金・協力金の申請方法がわからない」

 役所の担当部署に問い合わせをしようにも、電話番号が書いてあるのもホームページ上であり、インターネットを使いこなせない情報弱者は、なかなかたどり着けない。筆者はこの店の店主に、まずは近くの役所に行くことを勧めたが、結局閉店してしまったと聞いた。

店の営業が立ち行かず
夜逃げをしてしまう人も

 東京商工リサーチによると、新型コロナウイルス関連破綻は、11月5日時点で累計2387件に上るという。しかし、これは表に出た数字だ。夜逃げ(失踪)で音信不通になった数は、ここには入っていない。

「令和の時代に夜逃げがあるのか」と思われるかもしれないが、今の世の中でも「飛ぶ」ことはあるようだ。

 店主が突然いなくなるため、家主や仕入れ業者に迷惑がかかってしまう。勝手に店内を整理するわけにもいかず、賃貸借契約の解除と明け渡し訴訟手続きを裁判所に届け出ることになる。それだけ、時間や費用がかかってしまう。

 一方、夜逃げする側は支払いを踏み倒すので、携帯電話が不通になる、家族とは籍を外さざるを得ない、住民票を移せずに保険証が使えなくなるなど、日常生活でかなりの制約を受けることになる。それでも、現実逃避で「飛ぶ」人が一定数いるのが現状だ。

 このような飲食店の現状を考えると、繁華街がかつての賑わいを取り戻しつつあるのは喜ばしいことだ。しかし、店内や路上を見ると、マスクを付けていない人や、正しく着用していない「なんちゃってマスク」の人など、感染対策をおろそかにしている人が少なくない。

 正しくマスクを着用し、十分な感染対策を取りながら飲食店の苦境を救っていきたいものだ。