10月に緊急事態宣言が解除されたものの、ビールメーカーに楽観ムードはない。背景にあるのは、二つの「時限爆弾」の存在だ。コロナ禍は流通構造が抱えるリスクを一挙に顕在化させた。ビールメーカーが直面するのは売り上げ消滅と値下げドミノの悪夢だ。特集『ビール蒸発』(全8回)の#3では、メーカーが直面する危機に迫った。(ダイヤモンド編集部 山本興陽)
緊急事態宣言解除も、ビール業界に漂う悲観
業界が抱えた「二つの爆弾」
「ビールの代わりに“この商品”を置いてくれませんか?」――。
緊急事態宣言が続くこの夏、アサヒビールの営業マンは、ある外食大手の仕入れ担当者にそう言って頭を下げていた。
この商品とは、アサヒが今年3月に発売した「ビアリー」である。アルコール度数はわずか0.5%で、酒税法上では酒に該当しない「清涼飲料水」だ。新型コロナウイルスの感染拡大で酒の提供を制限された飲食店に対して、ビールは駄目でもビアリーなら客に提供が可能だとアサヒは営業に力を入れていた。
長く続いた緊急事態宣言は、ビールメーカーの営業マンにとっての「本職」をも“蒸発”させた。
10月1日、全国で緊急事態宣言が解除され、酒類の提供制限も緩和された。営業マンにとって臥薪嘗胆の日々が当面、終わりを告げる時が訪れたのだ。
だが、ビールメーカー関係者の間には悲観論が漂っている。長く続いたコロナ禍は、ビール業界に「2大時限爆弾」を埋め込んだのだ――。