今後の金融市場の運命は、消費者の「インフレ期待」を中央銀行がどう解釈するかに左右されるかもしれない。中銀にとっては、健全な心理学の領域ではなく、フロイト的な疑似科学の世界へと足を踏み入れるリスクがありそうだ。米国ではインフレ率が6%を突破しており、今後さらに伸びが加速することも十分あり得る。欧米の中銀は一時、疑問を抱きつつもあったが、ここにきて消費者物価指数(CPI)を押し上げているのは一時的な要因だとの考えを再び強調するようになっている。投資家も今のところは中銀を信じているようだ。株式市場は最近、インフレ懸念で売られることもあったが、その後は持ち直している。債券市場は、目先の金利上昇を予想しながらも、何十年も金利が低水準に張り付くとの見方を織り込んでいる。