決算書100本ノック! 2021冬#7Photo:picture alliance/gettyimages

JAグループには農業商社の役割を担うJA全農という全国組織があるが、北海道のホクレンは全農に統合せず独立を保っている。特集『決算書100本ノック! 2021冬』(全16回)の#7では、JA全農とホクレンの「配当力」を初めて比較。その違いが出資者である地域農協の経営格差につながっている実態をあぶり出した。(ダイヤモンド編集部 千本木啓文)

弱者連合のJA全農を
強者連合のホクレンが圧倒する必然

 10月の衆議院議員選挙期間中、自民党の麻生太郎副総裁のある発言がインターネット上で大炎上を起こしていた。

「年平均気温が2度上がったおかげで北海道米がおいしくなった。昔は『厄介道米』と言われるほど売れないコメだった。農家のおかげですか?農協の力ですか?違います。温度が上がったからです」

 温暖化を是認するような麻生氏の発言によって、「カーボンニュートラル社会」を実現しようという自民党の本気度が疑われることになったのだが、実は、別の理由で農業関係者の怒りを買っていた。

 北海道の農協関係者は「麻生氏は生産者の努力を無視している。本州のコメが『コシヒカリ』など高価格帯に偏っているのに対し、北海道は『ななつぼし』など手頃な価格の品種を開発、増産してきたのに」と憤りを隠さない。

 実際に、北海道の農業は大躍進中だ。農業産出額は10年前の約1兆円から1兆2558億円まで拡大(2019年度)。おいしいコメを作れるようになっただけでなく、野菜や乳製品などの産出額を大幅に増やした。

 この急成長の立役者といえるのが、農協が出資する農業商社、ホクレンだ。農産物を販売したり肥料や農薬を卸したりして収益を上げ、配当の形で農協に還元する仕組みを採っている。

 ホクレンの高配当ぶりは、国内最大の農業商社であるJA全農はもちろん、大手商社の三菱商事さえもしのぐ。

 農業ビジネスにおける「配当力の高さ」とは何を意味しているのか。以降では、北海道と本州などの農業商社や農協の実力差を明らかにしてゆく。