楽天グループは、携帯電話事業の赤字が続いて財務悪化が隠せない。今年3月に日本郵政などからの出資で2400億円の資本を増強したが、いまだ自己資本比率は低水準で、有利子負債は過去最大規模に膨らんだ。特集『決算書100本ノック! 2021冬』(全16回)の#13では、今後、楽天が取り得る財務改善の選択肢を探った(ダイヤモンド編集部 村井令二)。
生煮えの「楽天銀行IPO検討」
三木谷社長の苦しい胸の内
「そういう意味でも、楽天銀行の上場を検討していくことになる」――。
楽天グループの三木谷浩史会長兼社長は、財務悪化の対応策として、グループ内で100%の株式を保有する楽天銀行のIPO(新規株式公開)が切り札になるとの考えを示した。
2020年4月に携帯電話事業に新規参入した楽天。参入2年目の21年12月期の携帯事業の赤字は一段と膨らんでおり、もはや財務悪化が無視できない。
楽天銀行のIPOは、銀行子会社の資本を厚くすることを表向きの目的としているが、上場に伴う株式売却で得られる資金の確保が重要な狙いであることを認めた格好だ。
だが、楽天が実際に楽天銀行のIPOに踏み込むかどうかは不明な点が多い。
楽天は9月30日に「楽天銀行のIPOの検討開始」を発表したが、その内容を詳細に見ると「検討の結果次第では、楽天銀行は株式上場しないという結論に至る可能性もある」と煮え切らない表現が目立つ。
こうした「生煮え」の発表をせざるを得ないところに、三木谷社長の苦しい胸の内がある。
なぜ「生煮え」のまま宣言をしたのか。次ページからはその理由と、携帯事業の赤字を補うべく、楽天が取り得る三つの資金調達の実現性を徹底的に分析する。