今年8回のシステム障害を起こすという大失態を招いたみずほフィナンシャルグループだが、決算は好調だ。純利益では、三井住友フィナンシャルグループと互角の戦いを見せているが――。特集『決算書100本ノック! 2021冬』(全16回)の#8では、みずほの好調の裏に隠れた数百億円も利益を押し上げる「カラクリ」を解説する。(ダイヤモンド編集部 田上貴大)
今年システム障害8回でも決算好調
みずほ「利益爆増」に隠れたカラクリ
「(システム障害の影響で)投資信託の解約がある一方、人生100年時代といわれる中で、個人の資産運用が大きく伸びた」(坂井辰史・みずほフィナンシャルグループ〈FG〉社長)
今年8回のシステム障害を招いたみずほ。だが、悪影響を最も受けたはずの2022年3月期の第2四半期(4~9月期)決算は、本業利益を示す業務純益は前年同期とほぼ同じ4385億円を維持し、純利益に至っては前年同期比79%増の3856億円と爆増ぶりを見せる結果となった。
すでに21年3月期の時点で、純利益は三井住友フィナンシャルグループに肉薄していた。今期に入ってからは、第1四半期(4~6月期)で三井住友を逆転、第2四半期で再逆転されるという大接戦の2番手争いを演じている。
前期にシステム障害が勃発するまで、下克上に「執念を燃やしていた」(みずほ関係者)とされる坂井氏だが、その勢いは今期も感じられる。ある三井住友銀行幹部も「(障害の影響で)大口取引の取り逃しがあるとはいえ、あれだけの顧客基盤があれば収益は揺るがないだろう」と競合を評する。
むしろ、迎え撃つ三井住友に不安材料がある。子会社のSMBC日興証券において、社員らによる相場操縦の疑いで、証券取引等監視委員会の調査を受けていると明らかになったことだ。社債の引き受け主幹事から外される事例が出るなど業績への悪影響は免れず、三井住友にとって予断は許されない。
こうして見ると、みずほはシステム障害という大困難を業績面では乗り越えたかに思える。
しかし、みずほの“大躍進”の理由はそれだけではない。裏側には、合法ではあるものの数百億円も利益を押し上げる超異例の「カラクリ」があるのだ。財務マジックの種を解き明かしていこう。