決算書100本ノック! 2021冬#11Photo:PIXTA

建設業界トップの大和ハウス工業は、創業100年の2055年に売上高10兆円を目指す。成長の源泉は不動産投資による「攻め」の経営だ。だが、同時に借金を抑えようという「守り」にもこだわっている。特集『決算書100本ノック! 2021冬』(全16回)の#10では、攻めに振り切れない「二つの懸念」の中身に迫る。(ダイヤモンド編集部 大根田康介)

物流施設に積極投資
有利子負債が2倍以上に

 ハウスメーカーとしてのし上がり、建設業界の頂点に君臨する大和ハウス工業で、構造改革が進んでいる。2021年4月から、グループ内の事業重複を整理・合理化するため事業本部制に移行。10月には、流通店舗事業本部に属する大和情報サービスとダイワロイヤルを経営統合した。

 同社は住宅や倉庫などの建設請負を主力に成長。22年3月期の売上高予想は4兆3000億円で、創業100年の節目となる55年に売上高10兆円を目指す。だが、建設請負は競合が激しく、それだけで6兆円近く増やすのは至難の業だ。

 そこで、米国住宅会社を買収するなど構造改革を進めてきたが、次の大きな柱として物流施設の開発、つまり不動産投資を打ち出したのだ。

 ところが、事業構造が大きく変わることで、有利子負債が急速に拡大。17年3月期の6406億円から、22年3月期中間期には1兆4338億円と2倍以上に膨れ上がった。積極投資による「攻め」の経営の結果とはいえ、無制限に有利子負債を増やせば信用力が落ち、資金調達に影を落としかねない。

 そこで、バランスを取るため「守り」の目標も同時に据えた。具体的には「有利子負債÷自己資本(株主資本+その他包括利益累計額)」の式から導かれるD/Eレシオの目標値を0.5倍に設定。同業他社の水準に合わせたものだが、直近の22年3月期中間期では0.74倍を記録。つまり、目標値に届いていないのだ。

 なぜ、大和ハウス工業は「攻め」と「守り」の相反するような目標を設定しなければならないのか。財務諸表を深掘りすると、そのジレンマの理由と苦悩する姿が浮かび上がってくる。目標を守りつつも、不動産業のライバルに勝つ方法はあるのだろうか。