決算書100本ノック! 2021冬#15Photo:Bloomberg/gettyimages

2021年3月期まで2期連続の赤字に転落した日産自動車が自信を取り戻しているかのように見える。22年3月期の通期見通しでは、売上高予想が約1兆円も下振れするのに、営業利益は上方修正したのだ。半導体不足に伴う減産の長期化や原材料高騰などに警戒感を強める自動車メーカーが相次ぐ中、日産が上方修正できたのはなぜなのか。特集『決算書100本ノック! 2021冬』(全16回)の#15では、そのカラクリの背景にある値引きの裏事情に迫る。(ダイヤモンド編集部副編集長 浅島亮子)

敗者代表の日産、勝者代表のトヨタ
「利益」を上方修正した要因の違いとは

「財務規律を維持し、量より質を推進する意識改革を徹底することができた。販売パフォーマンスの効果が表れた」

 日産自動車のアシュワニ・グプタ最高執行責任者(COO)は、2022年3月期中間決算(21年4月〜9月)説明会の席上で、そう言って胸を張った。

 今回の決算で日産は、22年3月期通期の営業利益予想を従来計画の1500億円から1800億円へと上方修正。21年3月期まで2期連続の赤字に転落した日産が、にわかに自信を取り戻しているかのように見える。

 中間決算が出そろった自動車大手7社のうち、営業利益を上方修正したのは、日産に加えてトヨタ自動車と三菱自動車の3社のみだ。

 それまで堅調だった自動車決算だが、第2四半期(7〜9月)を境に景色が一変しつつある。半導体不足に伴う減産の長期化や原材料高騰など今後のネガティブ要因を織り込んで、警戒感を強める自動車メーカーが相次いでいるのだ。

 前期決算まで敗者代表だった日産と、販売台数で世界一の座に君臨する勝者トヨタ。逆風下の自動車業界で、対照的な立場にあった2社がそろって上方修正できたのはなぜなのか。

 特に日産の場合、22年3月期売上高は従来予想より9500億円も引き下げているにもかかわらず、利益は上振れする見通しになっている。約1兆円の減収予想で利益を捻出する“カラクリ”はどうなっているのか。

 日産とトヨタの決算資料を読み解くと、値引きを巡る“意外な裏事情”が明らかになった。