自工会役員人事に表れる
豊田会長の狙い
日本自動車工業会(自工会)会長を務めるトヨタ自動車の豊田章男社長が、異例中の異例ともいえる会長の3期目の続投を決めた。日本の自動車産業の総本山である自工会会長は、豊田章男氏が2018年5月から就いていた。
自工会会長職は、それまでトヨタ・日産自動車・ホンダの各社の代表が輪番制で2年の任期を務めており、豊田会長は12~14年に次ぐ2度目の登板だった。自工会会長に再登板するケース自体も初めてのことだ。
20年5月から2期目を務め、来年の22年5月に任期が終了することになっていた。本来なら次期会長はホンダに回る予定だった。
だが、豊田会長の3期目の続投が決まった。さらに、22年5月から副会長陣を4人から6人体制に増強し、乗用車・商用車・軽自動車・二輪車の日本車勢を集結、「カーボンニュートラル・CASE対応にオールジャパンで取り組んでいく」(豊田会長)盤石の体制を築いた。
豊田会長はこれまで会長として、100年に一度の大変革の時期を迎えている自動車産業のかじ取りを担ってきた。その間、コロナ禍の勃発、東京五輪延期、東京モーターショーの休止・延期という一大事に見舞われながら、強力なリーダーシップを発揮し、自工会組織の改革も一気に進めた。
日本車勢の中では「トヨタ一強」が進んでいる背景もあり、「余人をもって代えがたい」ということで豊田会長続投を推す声が強かったのかもしれない。事実、世界的なカーボンニュートラル実現への課題、“EVシフトに出遅れている日本”という一方的な批判を覆す強烈なリーダーシップへの期待は大きい。
だが半面、24年以降の“ポスト章男”の日本車リーダーがどうなるのかという懸念や、トヨタ内部でもトヨタ社長就任から12年たち、干支でいうと一回りしてしまった豊田社長の後継問題もある。異例の会長職続投の裏側を見ていこう。