昔ながらの女性スキャンダルや、取引での不祥事などがネタにされることが多いです。社長や役員が、暴力団の妻が経営している飲食店を利用したとか、取引先の女性と肉体関係を持ったとか、売春をしたとか、そういう話をきっかけに恐喝するケースは、暴力団排除が進んだここ十数年でも多い。

 例えば、暴力団の妻の店に役員が飲みに行ったとします。本来、その役員は何も知らないでただ酒を飲んでいただけだったとしても、「そういう店にお金を払って、ヤクザに便宜供与している」と言いがかりをつけてくる。その上で、「ネット記事に書きますよ、いいですね?」と迫ってきます。

 暴力団は恐喝のプロですから、具体的にいくら払えとかは恐喝になるので言ってこない。企業経営者が、別の暴力団周辺者に対処を相談するのを待っているんです。間に人を介在させれば、人間関係が複雑化して、事件になりにくいと踏んでいることが多い。

 また、最近では暴力団とは全く関係がない、企業をクビになった不良社員や、筋の悪い取引先が、顧客情報の流出などで企業を脅すこともあります。実際に私もそうした事件に接したことがあります。

 しかし、仮に恐喝に成功したとしても、いずれ暴力団に取り込まれる可能性が高いと思います。恐喝で得たあぶく銭で、繁華街で派手に遊んでいれば目を付けられますし、表に出せないカネに関わる強い情報網を暴力団は持っています。いずれ恐喝や犯罪行為がバレて、「お前、良いシノギしてんじゃねえか」と暴力団にゆすられてしまうでしょう。

 そうなると問題は、恐喝に応じた企業のスキャンダルも、暴力団に握られるということです。情報漏洩などの元々の弱みに加え、「恐喝に屈した」というスキャンダルが追加され、最初に恐喝されたときの金額の何倍ものカネをふんだくられることになります。

「ネットに書く」の脅しには
弱気を見せずに名誉毀損で対処

――女性スキャンダルが事実であったり、企業側に落ち度があった場合は、どう対応するのが良いですか。

 ケース・バイ・ケースですが、原則としては、やはり取引には応じないことです。恐喝で事件にすることもありますが、手練れだと、恐喝にならないようなギリギリの線を行くこともあります。攻撃を止めるために右往左往している間に、傷口を広げてしまう。