最近は誰もがツイッター等のSNSで手軽に情報発信ができてしまい、誰でも恐喝ができてしまいます。すぐに「このことをネットに書く」と脅かしてくることは容易に想像できます。この場合は、弱気を見せずに「どうぞ」と相手に言うべきでしょう。その上で、「事実と違うことやプライバシーに関わることがあれば、徹底的に対処する」と、逆に厳しく接しておくべきです。もし記事が出ても、恐喝目的ですから、名誉毀損(きそん)で対処すれば良い。

 最悪なのは、別の暴力団や、事件屋などの暴力団周辺者に解決を依頼することです。これをすると、ささいな女性スキャンダルや醜聞が、一気に「企業と暴力団」という致命的スキャンダルに格上げされる。いずれ、その話を別のブラックジャーナリストや似非右翼などが嗅ぎ付け、恐喝の「二の矢」を打ってくる。

談合事件では
企業と暴力団が「一蓮托生」

――櫻井さんは暴力団が仕切る談合事件の捜査を経験されていますが、談合では、企業と暴力団はどのような関係性にあるのですか

 私が関わった談合事件は、東京都が発注する公共工事に参加する建設会社各社が、事前に入札価格を談合していたものです。談合は一見、恐喝などとは違い被害者がいないように見えますが、公共工事の発注を不当な高値に維持することにつながり、税金を納めている都民が被害に遭っています。その意味で、建設会社と、談合を仕切る暴力団関係者は共犯といえます。

 とはいえ、談合している会社は、税金を詐取しようなどとは考えていません。純粋に、自分の会社を守りたい、仕事を取りたいということで必死なのです。実際に捕まえた建設会社の社員も、仕事では暴力団とつるんでいましたが、家庭ではいいパパだったのです。

 ではなぜ暴力団が仕切るのかといえば、談合という違法行為の秩序を守るための「番人」だからです。

 もし、建設会社の中に、談合から抜け出そうとする会社があった場合、同じ建設会社が「談合に参加しろ」とは言っても聞きません。そこで、暴力団の出番です。もし、談合を抜けようという会社が出てきたら、「俺の顔をつぶすのか」と圧力をかける。実際に、談合を抜けようとした会社社長の自宅にヤクザが嫌がらせしたり、脅迫文や街宣車が差し向けられたりしたことがあります。談合を維持するためには、暴力が必要なんです。

 暴力団側も、建設会社に言うことを聞かせるために、様々な仕掛けをします。例えば、談合参加企業でゴルフコンペを開いて、そこに暴力団も加わるのです。入れ墨丸出しでゴルフをして、怖がらせる一方で、一緒に遊んだり食事をしたりして、コンプライアンス感覚をまひさせるのです。実際の談合事件では、暴力団だけでなく、他の建設会社も一緒になって、談合破りを阻止しようとしていました。