自分の中の多様性に気づき、理解することが大切
コロナ禍で、「ブレンデッドラーニング(Blended Learning)」と呼ばれるeラーニングと対面型(集合型)学習を併用する教育方法が注目されるようになった。Diversity Voyageのような短期海外研修も、これからはリアルとオンラインの「ハイブリッド」が主流になっていくのかもしれない。
辰野 「ハイブリッド」という言葉を、教育業界でも当たり前に使うようになりました。オンラインとリアルの両方をうまく使いこなしましょう、と。私自身、都心でずっと生活してきたのですが、数年前に郊外に引っ越し、オンラインとリアルでのコミュニケーションのそれぞれの利点を実感しています。
SDGsは「2030年までに達成する目標」と定められているが、GiFTの“2030年までの今後10年間”を辰野さんはどう想い描いているのだろう。
辰野 GiFTは「グローバル教育推進プロジェクト」という名称です。日本での「グローバル教育」は、留学体験や英語教育とともに把握されることが多いですが、私が若いときに出会い学んだ「グローバル教育」はアメリカ発祥のもので、宇宙から地球を俯瞰してみて、地球は一つの生命体であることを改めて認識したうえで環境問題への対策や平和教育、文化理解をしていきましょうというものでした。
GiFTのこれまでの10年間は「人」に焦点を当てた活動がメインでしたが、そうした本来の「グローバル教育」のビジョンとともに、「環境」や「ライフスタイル」に対しての比重をもう少し高めたいですね。
また、GiFTのプログラムは10代から20代の若者を対象にしたものが多いですが、より広い対象に向けて、現在行っている学校教員向けや企業向けの研修をさらに広げていく10年になるでしょう。学生だけではなく、ビジネスパーソン向けにも、自分の生き方や志を考えるグローバル・シチズンシップ研修を行っていく予定です。
辰野さんは17歳の時にNGOの国際会議に参加し、これまでに50カ国以上を旅し、120カ国以上の人々と交流を持ってきた。さまざまな人たちの持つ価値観への理解……ダイバーシティ&インクルージョンの姿勢が当たり前になっている辰野さんに“多様性”への向き合い方を聞いた。
辰野 労働力人口の減っていく日本では海外にルーツを持つ人が増えていくはずという考えから、私はアメリカの大学院で「ダイバーシティ・トレーニング」を勉強しました。日本では、まだダイバーシティという言葉がほとんど聞かれない時代でした。授業では、民族や宗教をはじめ、あらゆるダイバーシティを学びましたが、私がたどり着いたのは、「人それぞれの中にある多様性」です。大切なのは、地球志民プロセスの最初のステップである「自己を知り、受け入れること」だと分かりました。自分の中の多様性に気づき、それを受容すること。そのうえで、他者に接し、社会を広く見ること。いろいろな人がいて、自分の中にもいろいろな自分がいる――そうした理解が世界平和への一歩だと思います。
※本稿は、現在発売中のインクルージョン&ダイバーシティマガジン「オリイジン2020」からの転載記事「ダイバーシティが導く、誰もが働きやすく、誰もが活躍できる社会」に連動する、「オリイジン」オリジナル記事です。