これらはいずれも経済の原則を無視した文政権の経済政策が原因である。文政権は財閥への反発、政権の経済政策失敗への言い訳と自己正当化に終始し、経済の実態を見ようとしてこなかった。

 これでは韓国経済が困難に陥っても有効な対策を打つことはできない。失敗と現実無視、そして一層の事態の深刻化を繰り返してきたのが文政権の4年間であった。

 与党の次期大統領候補となった李在明(イ・ジェミョン)氏の経済政策も基本的にはベーシックインカム(最低所得補償)政策による金配りと、経済への介入であり、文政権の失敗を踏襲することになろう。

 韓国経済の立て直しには、思い込みや政治性向による政策ではなく正しい現状認識と韓国経済の実態に即した政策が必要である。

財閥の輸出が
韓国経済を支える

 三星、SK、現代などの財閥系企業は一流である。巨大財閥企業の輸出も好調である。特にサムソン電子やSKグループの主力事業である半導体メモリーはコロナ禍でも世界的かつ急速な「デジタルシフト」によって需要が急増し、サムスン電子の2020年度決算は連結ベースで29%の増益、SKの半導体部門であるハイニックスは同じく86%もの増益となった。

 韓国全体としての輸出の伸びは記録的な状況である。2020年9月頃からはっきりと回復の兆候が見え始め、前年同期比で2桁増が続いた。2021年は単月ベースで過去最高の輸出金額の更新が続いている。輸出数量ではなく、金額が伸びていることが特記される。

 コロナによる経済の落ち込みを支えてきたのが財閥企業である。しかし、財閥企業がこれからも好調を維持できるかには不透明感が漂う。

政権による財閥たたきは
成長の原動力を低下させる

 政府による財閥への過剰な圧力が財閥系企業の成長余地をそいでいる。その最大の要因が財閥トップへの締め付けである。

 サムスンの事実上のトップの李在鎔(イ・ジェヨン)副会長は、ソウル高裁の差し戻し審で1月18日、懲役2年6カ月の実刑判決が言い渡され収監された。判決は、李被告が自身への経営権継承のために、朴槿恵(パク・クネ)前大統領に支援を求め、見返りとして86億8000万ウォン(約8億3000万円)の賄賂を提供したとする容疑である。