細胞に侵入しやすく、免疫から逃れやすい
“顔認証をすり抜け”再感染リスク2.4倍

 ただし、一口にスパイクタンパク上の変異といっても、その影響にはいくつかのパターンがある。

 例えば、アルファ株(英国型)やベータ株(南ア型)、ガンマ株(ブラジル型)では、「細胞への侵入のしやすさ」を高める変異が確認されている。デルタ株に特徴的なのは、「免疫からの逃れやすさ」を促す変異だ。

 オミクロン株は上記の両パターンを複数持ち合わせているため、「感染力が高い」とされる
※南ア政府ポータルサイト

 特に、免疫から逃れやすいということは、「再感染しやすい」と言い換えられる。無理もない。免疫の“顔認証システム”は、過去の感染の記憶をベースに準備されている。顔つきがガラッと変わっていれば、すり抜けるのは簡単だ。

 実際、南アの研究グループは12月2日、「オミクロン株の再感染リスクはデルタ株やベータ株の2.4倍」とする査読前論文を公表した。

 研究では、11月27日までに感染が判明した280万人中、再感染の疑いは3万5670人だった。特に、デルタ株の流行時に感染した人の再感染が多いという。オミクロン株に、過去の感染で得た免疫を回避する能力があることを示す、疫学的な証拠といえる。

 ただし、南ア国立伝染病研究所(NICD)のアン・フォン・ゴットベルク氏は、再感染やブレイクスルー感染では重症化しないとの見通しを示している。
※ロイター「南ア、オミクロン株の再感染拡大 症状は軽度=専門家」(12月3日配信)

 では、オミクロン株に対し、私たちは今あるワクチンと治療薬でしのげるのか。今回はひとまずワクチンについて確認しておきたい。

世界でブレイクスルー感染続々
ファイザーは3回接種でオミクロン株にも自信

 ワクチンについて一番問題になっているのが、「ブレイクスルー感染」だ。ワクチン接種完了後のオミクロン株感染が、世界中で続々と報告されている。

 日本国内でも、2例目に感染が確認されたナミビア人外交官は、入国前の10月に2回接種を完了していた。また、イスラエルではファイザー3回接種を完了した医師2人のブレイクスルー感染も報告されている。ただ、いずれも軽症だ。

 そもそも再感染が多いなら、ブレイクスルー感染が起きても何ら不思議はない。ワクチンは疑似的な感染を起こして免疫システムを作動させ、本当の感染に備えるものだからだ。