サイバーエージェントの人事トップが語る「年末年始はこれさえできればOK!」

何かと忙しいビジネスリーダーにとって、まとまった時間がとれる年末年始をどう過ごすかは大きなテーマだが、毎年しっかり予定を立てることなく迎えてしまって後悔…という人も多い。
特別連載「リーダーの年末年始」では、今年話題となったマネジメント本の著者に、年末年始との向き合い方について詳しく話を聞いていく。
第2弾は、『若手育成の教科書』の著者でありサイバーエージェント常務執行役員CHOのソヤマンこと曽山哲人さん。リーダーとして自らをアップデートさせる、理想の年末年始の過ごし方を聞いた。(構成/ダイヤモンド社・和田史子、撮影/増元幸司)

ポイントは「1つだけやることを決める」

――曽山さんは、年末年始をどのように過ごしていますか?

曽山哲人(以下、曽山):年末年始は毎年、「翌年1年をどうしたいか」を考えるようにしています。具体的には「インプット」と「アウトプット」の2段階で分けています。

インプットは、特に本や雑誌。特にテクノロジートレンドや社会の変化がどうなるかという「長期予測の情報」を、なるべく多く読むようにしています。視野を広げたり、考えの選択肢を増やしたりするようにしています。

アウトプットは、いったんは期限を設けず、じっくりと考えるようにしています。ここ最近の自分のチャレンジを書き出し、今後チャレンジしたいこと、組織に貢献できることを書き出します。

特に意識しているのは、「やりたいこと」だけではなく「会社のプラスになること」を書き出すことですね。組織に貢献することがもっとも業績にも直結するためです。

プライベートは純粋にやりたいことを書き出しています。健康面のことや、趣味(最近は「ソヤマン」というキャリアアップYouTubeの配信が趣味です)などを思いつく限り書き出します。

――書き出して終わりですか?

曽山:ここから、「翌年1年をどうしたいか」を絞っていきます。あえて期限を設けずに書き出したものを並べて、次は「この1年で改めて注力することが何か」を絞り込みます。基本的には1つです。いろいろやりたいこともありますが、大きな1つ(マストワンと呼んでいます)を決めておくことで、絞り込んで成果につなげることができます。私の場合は、キーワードにして、常に頭の隅に置くようにしています。

――ちなみに、曽山さんの2021年の「マストワン」は何でしたか?

曽山:2021年のキーワードは「抜擢カルチャー」でした。「『抜擢』は最強の人材育成スキルだ」ということで、社内はもちろんですが、社外の方にも「抜擢することで人を育てよう」というカルチャーを浸透させようと考えたのです。

「抜擢なんて、ウチの会社にはポジションがないよ」とおっしゃる方も出てくるでしょう。ですが、私の言う「抜擢」は、部下やメンバーに期待をかけることです。「これに期待しているよ」「これをお願いしたい」「これを任せようと思っているんだけど」こんなふうに誰かに期待をかけることが、「抜擢」です。

――まさに、曽山さんの新刊『若手育成の教科書』でおっしゃっていたことですね。

曽山:そうです。「抜擢カルチャー」というキーワードから、これまでの「抜擢」の定義を変え、「最高の育成は抜擢すること」というメッセージと、その絶大な効果を多くの方に伝えたい。そのような思いで「抜擢カルチャー」をみなさんの職場でも使えるよう言語化し、1冊にまとめたのが『若手育成の教科書』でした。

――ほかにどのような年末年始の過ごし方をしてきましたか?

曽山:仕事以外のことで「マストワン」を決めて過ごした年もあります。例えば「年末の旅行を目一杯楽しむ!」と決めてリフレッシュしたこともありますね。また、「本をたくさん読むぞ!」と決めて10冊くらい買って、「5冊くらい読めたら最高!」と決めた年もあります。

いずれにしても、ポイントは「1つだけやることを決める」ことです。私も毎年、年末になるといろいろやりたいことが思いつきますが、あえて「この年末年始はこれができればOK!」と先に決めておくようにしています。それがリフレッシュにつながるものでもいいですし、自分の人生や未来に向き合うことでも良いと思います。1つだけ決めて、それができれば「良い年末年始だった」と自分を肯定する。これによって、良い年末年始にすることができます。でもほとんどの年は「1年を振り返って、来年をどうしたいか言葉にしよう」と考えることですかね。

「2022年、『メンバー育成』で実践したいこと」を書き出す

――なるほど。忙しいビジネスパーソンだからこそ、あえて1つに絞ることが大切なのですね。最後に、「来年こそ良いマネジメントをしたい」と考えるリーダーへメッセージをお願いします。

曽山:自分にとっての「良いマネジメント」「素晴らしい1年」などのお題について、ぜひ自分の言葉で書き出してもらえればと思います。文字にすることは、自分への宣言になります。なんとなく頭で考えるだけではなく、文字に書くことで記憶の定着も上がります。自分の未来を自分で決めるためにも、文字にするのがおすすめですね。

さらにおすすめは、それを発信すること。社内で発信すると応援や反響がもらえることもあっておすすめですし、社外にブログやSNSで発信すると思わぬ援護射撃やアドバイスを社外の方からもらえることがあります。思いや考えは、自分の中だけでなく、外にどんどん出していきましょう。批判が怖いと思うかもしれませんが、それ以上に応援が増えることもあります。

――文字にする。年末年始のマストワンをいただきました!リーダーのみなさんに具体的な「お題」をいただけたらうれしいです!

曽山:せっかくですので、私からみなさんに成長につながる「お題」を投げかけたいと思います。

「2022年、『メンバー育成』で実践したいこと」

例えば、部署に20代の方がいる場合は、その方をイメージして「『若手育成』のために実践したいこと」としてください。『若手育成の教科書』に書かれていることや、連載記事でお伝えしていることを参考にしていただき、「自分の職場で何を取り入れてみようか」と書き出してみていただけると、自分なりの考えを固めることができます。

・誰にどのような期待の言葉をかけるか
・メンバーひとりとの対話の時間をどう増やすか
・組織の成果のために、誰を抜擢するか

一人一人の顔を思い浮かべながら具体的なシーンを考えると効果的です。本や記事でインプットしたことを、自分の言葉でアウトプットするという意味でとてもおすすめです。年末年始、リーダーのみなさんがより充実した時間を過ごせることを願っています!

サイバーエージェントの人事トップが語る「年末年始はこれさえできればOK!」曽山哲人(そやま・てつひと)
1974年神奈川県横浜市生まれ。上智大学文学部英文学科卒業。1998年伊勢丹に入社、紳士服部門配属とともに通販サイト立ち上げに参加。1999年、社員数が20人程度だったサイバーエージェントにインターネット広告の営業担当として入社し、後に営業部門統括に就任。2005年に人事本部設立とともに人事本部長に就任。2008年から取締役を6年務め、2014年より執行役員、2016年から取締役に再任。2020年より現職。著書は『強みを活かす』(PHPビジネス新書)、『サイバーエージェント流 成長するしかけ』(日本実業出版社)、『クリエイティブ人事』(光文社新書、共著)等。ビジネス系ユーチューバー「ソヤマン」として情報発信もしている。
2005年の人事本部長就任より10年で20以上の新しい人事制度や仕組みを導入、のべ3000人以上の採用に関わり、300人以上の管理職育成に携わる。毎年1000人の社員とリアルおよびリモートでの交流をおこない、10年で3500人以上の学生とマンツーマンで対話するなど、若手との接点も多い。
サイバーエージェントの人事トップが語る「年末年始はこれさえできればOK!」
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