今年1番売れたリーダー本の著者が教える、年末年始に「休むこと」の意味とは?

年末年始は1年を総括し、気持ちを新たに次の1年の抱負を練るのに最適なタイミング。優れたリーダーを目指すビジネスパーソンであればなおさら、この時間を無駄に浪費するのは避けたいところだ。
特別連載「リーダーの年末年始」では、今年話題となったマネジメント本の著者に、年末年始との向き合い方について詳しく話を聞いていく。
第1弾は、“2021年1番売れたリーダーシップ本”となった『リーダーの仮面』の著者である安藤広大さん。リーダーとして自らをアップデートさせる、理想の年末年始の過ごし方を聞いた。(取材・構成/友清哲、撮影/疋田千里)

年末年始は休んでいい!

――年末年始が近づいて来ました。安藤さんはこの時期をどのように過ごされますか。

安藤広大(以下、安藤):年末年始はいつも、リフレッシュの時間にあてています。家族と旅行をしたり、両親を自宅に迎えたりして、あとはテレビでスポーツ観戦を楽しみながらお酒を飲むなど、とにかくやりたいことを自由にやって過ごしていますよ。

――スポーツ観戦というのは?

安藤:僕は早大ラグビー部の出身なので、大学ラグビーはやはり気にしています。行ける時は現地観戦に出かけることもありますよ。また、今はプロバスケットボールチーム「福島ファイヤーボンズ」のオーナーでもあるので、正月の試合はやはりチェックしています。もっとも、これは仕事の範疇になってしまいそうですが(笑)。

――それでも、正月ならではのイベントや行事を大切にされている様子が伝わってきます。

安藤:やはり仕事と家庭では過ごすコミュニティがまったく異なりますから、家族の一員としての自分に頭を切り替え、職場とは違った役割をまっとうするのもいい気分転換になるのではないでしょうか。世の中を見れば昨年はまさしく激動の1年でしたが、それに比べれば今年は少し落ち着きを取り戻しました。その意味で、皆さんこの正月は昨年よりも平穏に過ごせるのでは?

――では、「休むこと」の意味を、安藤さんはどのように考えていますか。

安藤:集中力の原動力でしょう。区切りや節目を意識して生活にメリハリを持たせることは、集中力を維持するために重要です。そのためには休む時にはしっかり休む。これが大切だと思います。

とくに経営者やマネジメント層であれば、普段は頭の中から完全に仕事の話題を排除するのは困難でしょうから、せめて正月くらいはプライベートなことに没頭してほしいですね。家族サービスで体力を消費することもありますけど、仕事とはまったく違う頭の使い方をしていることが大切です。

――新しい1年へ向けた準備なども、あまり意識する必要はない、と?

安藤:そうですね。力まないほうがいいでしょう。それで言うなら、年末よりも年度末のほうがビジネスパーソンにとっては重要な節目ですから、正月はもう割り切ってリフレッシュしていいのでは。

「新年」という言葉に逃げてはいけない

――ところで、安藤さんは家庭内にもあるルールを敷いているとお聞きしました。これはどういったものでしょうか?

安藤:ルールというほど大げさなものではありませんが、「1ヵ月で土日に家庭以外の予定を入れていい日は2日まで」という決まりはありますね。これを決めるまでは、私も経営者なのでいろいろと予定が入り、家庭のために時間を作っている気でいたのに、妻は「子どもも小さいのに、休みの日も全然家にいない……」と不満に思っていたようです。そこでまずは、「土日は家庭のために時間をつくる」という状態の定義を揃えたのです。どうしても、2日より多く予定を入れなくてはいけないときは、妻に事前に承認をもらうようにしています。

もう1つのルールは、「子どもに対しての教育する内容が、自分の考え方と違うなと思っても、子どもの前ではそれを言わない」ということですかね。子どもたちが寝静まってから話し合うようにしています。最近では、あまり意見の相違も少なくなりましたけどね。

――お子さんの前での話し合いを避けるのはなぜですか?

安藤:親同士の意見が割れているところを、子どもたちに見せるべきではないと考えているからです。こちらがブレていては、子どもたちを惑わせてしまうことになりますからね。

話し合う際も判断基準は明快で、それが子どもたちの将来のためになるかどうか。この点だけは揺るがないように意識しています。

――なるほど。では、ご自身の部下の方に対してはいかがでしょう。著書『リーダーの仮面』では、ルール・位置・利益・結果・成長という5つのポイントが示されました。

安藤:マネジメントとは、部下の成長を待つ長期戦であると考えています。人は失敗をすることでその経験を糧にし、成長するものですから、長期戦とは「その成長を待つ時間」ということですね。リーダーや上司が失敗を避けるように手を回してしまうと、部下の成長機会を失うことになりますから注意が必要です。

マネジメント層からすると、自分がやったほうが早いと感じることも多いでしょうが、そこをぐっと堪えて“待つ”こと。それによって部下が著しく成長する様子を一度でも目の当たりにすれば、その後は待たないことが怖くなると思いますよ。世の若きリーダーの皆さんは、ぜひ騙されたと思って待ってみてほしいですね。

――「リーダーの仮面」をかぶって、割り切って待つ、と。

安藤:そうですね。誰しも未来は今よりいい自分になりたいはずで、それを目指して毎日の意思決定をしています。これは組織も同じで、チームの未来がいい未来になるための意思決定とは、今この瞬間の利益を優先するのではなく、未来の利益にフォーカスして行なうものでなければいけません。時にドライに、そうした決断をするために、「リーダーの仮面」をかぶるんです。

――『リーダーの仮面』読者の方にも、ぜひあらためて向き合ってほしい言葉です。この年末年始は、そうした思考の整理を行なうのにうってつけかもしれません。

安藤:勘違いしてはいけないのは、年が明けて年号が変わったとしても、実際は何も変わらないということです。年が変われば何かがリセットされるというのは完全なる錯覚で、「来年は頑張ろう」などと言うのであれば、今すぐ頑張るべきでしょう。来年とは単に今年の続きでしかないという意味からも、年末年始にあまり力み過ぎるのは良くないんですよ。

もちろん、年の変わり目を区切りとしていろいろ計画を立てるのは悪いことではありません。ただ、それを口実に目先のことから逃げたり、先延ばしにするようでは本末転倒ですからね。あくまでも次への集中力を養う区切りとして、この時間を有効に活用してください。

今年1番売れたリーダー本の著者が教える、年末年始に「休むこと」の意味とは?安藤広大(あんどう・こうだい)
株式会社識学 代表取締役社長
1979年、大阪府生まれ。早稲田大学卒業後、株式会社NTTドコモ、ジェイコムホールディングス株式会社を経て、ジェイコム株式会社(現:ライク株式会社)にて取締役営業副本部長を歴任。2013年、「識学」という考え方に出会い独立。識学講師として、数々の企業の業績アップに貢献。2015年、識学を1日でも早く社会に広めるために、株式会社識学を設立。人と会社を成長させるマネジメント方法として、口コミで広がる。2019年、創業からわずか3年11ヵ月でマザーズ上場を果たす。2021年1月現在、約2000社の導入実績がある。主な著書に、25万部を突破したベストセラー『リーダーの仮面』がある。
今年1番売れたリーダー本の著者が教える、年末年始に「休むこと」の意味とは?
今年1番売れたリーダー本の著者が教える、年末年始に「休むこと」の意味とは?
今年1番売れたリーダー本の著者が教える、年末年始に「休むこと」の意味とは?