経済学者や経営学者、エコノミスト128人が選んだ経済、経営に関わる良書をランキング形式でお届けする特集『ベスト経済書・ビジネス書大賞2021』(全8回)。第4回は2位の『資本主義だけ残った』の解説を書いた梶谷懐・神戸大学経済学研究科教授に、本書が描く米中の双方の資本主義のあり方について語ってもらった。(ダイヤモンド編集部編集委員 竹田孝洋)
政治的資本主義の下で
拡大する格差と生じる腐敗
著者が言うところの、米国に代表されるリベラル能力資本主義と中国に代表される政治的資本主義の双方ともグローバル化した資本主義の一つの形である。
中国を含めた社会主義国家にとって、革命は地主のような旧社会勢力を排除し、外国による支配から脱して民族主義国家をつくる上で必要だった。
これらの国家は、官僚システムが法の縛りを受けず、民間部門を統制することによって、経済のグローバル化の下で先進的な技術を効率的に受け入れ、持続的に経済成長してきた。
ただし、このような政治的資本主義の下では官僚システムを構成するテクノクラートに権力が集中して、格差が拡大し、法の縛りを受けないことで腐敗が生じやすい