BYDはトヨタを活用したブランドロンダリングが狙いか

 条件が揃えばBYDの車両をトヨタブランドで海外市場にも展開する可能性がないとも限らない。現時点のでの可能性は低いかもしれないが、仮に実現すればトヨタとBYDにとってはWin-Winの関係が成り立つ。

 トヨタにしてみれば、少ない投資で製造・供給体制を作ることができる。急激に立ち上がる欧米BEV市場に参入しつつ、国内など遅れた市場へのソフトランディングの時間稼ぎにもなる。対するBYDも、欧米市場に対してトヨタブランドで製品を進出させるメリットは計り知れない。政治的にも緊張感が高まる米中・欧中関係において、トヨタブランドに勝る国籍ロンダリングは存在しないのではないだろうか。

 先述の米国アナリストの分析では、4月に発表されたトヨタとBYDの合弁企業であるBETEが、トヨタのグローバルBEVの設計やOEM供給戦略の受け皿になる可能性を指摘している。BETEは両者による電気自動車の研究開発を行う300人規模のエンジニアリング会社とされているが、トヨタBEVのOEM戦略の司令塔としても機能できる立ち位置にいる。

 章男社長は以前、「このままでは日本で自動車を作ることができなくなる」という主旨の発言をしている。カーボンニュートラル政策で、エネルギーの脱炭素を国レベルで推進しないと、国内で工業製品の製造ができなくなることへの警鐘だ。トヨタがBEVに本気を出したことで、日本もEVシフトを無視できなくなったわけだが、同時にトヨタの工場が本当に日本からでていく可能性は視野に入れておくべきだろう。

 世界市場はバッテリーやBEVを強く求めている。ガラパゴス化が進む日本の自動車市場の特性を理由に電動化への対応を怠れば、日本では選ばれても、世界からは選ばれなくなる。