「好かれる」という基本はできているが……

 しかし、服や靴を変えようが、歩き方を変えようが、彼の独特な雰囲気は変わらないのです。個性が強すぎて、何をやってもやっぱり元の「山口さん」っぽい。どんなに歩き方がスマートになっても、やっぱり山口さんなのです。そりゃあ、これからも矯正トレーニングを続け、それこそお金をかけて増毛をし、新しいスーツを買い、スポーツジムで身体をがっしりさせれば、それなりによく見えるようになるでしょう。

 でも、……私の中には3つの疑問がありました。それは、「彼の個性をなくしてまで一般受けをよくする必要があるのか?」「彼は売れないキャラクターだけど、いやな感じではない。そんな彼を変えようとするのはおこがましいことでは?」「即戦力が求められる営業で、時間がかかる改造計画をどうしても実行すべき人物か?」の3つです。

 実際、当たり前だけど、私は山口さんを好きな異性の対象として見ることはできないし、私がお客さんでも山口さんの説明では物は買わない……と思います。でも、ひとつだけいえることは、私がそんな山口さんを「疎ましく思っていない」「嫌いになれない、憎めない人の1人」だと見ていることです。

 売れる基本は「好かれること」。“よいしょ”や“ぺこぺこ”して好かれるのではなく、自然に好かれる要素はとても重要なのです。彼の場合、その部分はすでに構築されているのかもしれません……。

「今のままでもいいんだけど……でも、やっぱり今のままではだめ」……。なんだか迷路に迷い込んだような感じです。

 それでも事実はひとつ、「山口さんは、このままでは売れない」ということです。結局、売れるような人に改造するためには……彼が売れない理由をもう一度考えてみるしかありません。行き止まりに来れば、また、振り出しに戻るしかないのです。