「ダサいおやじ」キャラを逆手にとれ
私「ねえ、山口さん……。私、あなたを初めて見たとき……ごめんなさい、怒らないでね……正直なところ、あなたがハゲでダサいオッサンだと思ったの。もちろん、知るほどにあなたのよさがわかってきたけどね。お客様もきっと同じように思うでしょう?だから最初から前情報を与えておいて、自分がどういう人間か自覚しているということをわかってもらうことが必要なの。そうすれば誰もが思う第一印象をあえて売りにできるはずでしょ。それで好感度がアップすると思うの」
山口「???」
私「相手が何を思っているかはっきりしているから、あとは簡単。同じことを言えば共感が生まれる。事実はハゲ。イメージはダサいおっさん。これを本人が自ら認めてしまえば、必ず共感を得られるの。そして信頼されるし、安心される!『ダサいおっさんですが、それでも本当はいいヤツなんですよ』って……」
山口「そんなもんですかねえ……」
私「電話でアポイントをとるときも、実際に会うまでに相手がわくわくできるようなイメージ設定をする必要があるの。それによって、実際に会った瞬間に『ああ、イメージ通り』と思ってもらうの。イメージしてきた時間もすでにコミュニケーションの時間に入るから、絶対に親近感もわくよ。あとは、第一声ね」
山口「……第一声」
私「そう、事務所に入ってきた人が、いきなり小難しい顔したダサいおっさんだったら、相手もがっくりしちゃうもん。だったら、『どうも~、にこにこ』って感じだったら『あれっ?なんか面白そうなのが来たぞ』なんて思ってもらえる。そこで言うの、『お電話で話したケムンパスおやじです』ってね」
山口「えーっ……そんなぁ……恥ずかしいなぁ」
私「ねえ、お願い。売りたいならやってみて。私も真剣勝負だから、自分のためになると思って私を信じてほしいの」
……そうして、大きな鏡の前で話し方を練習し始めたのです。来る日も来る日も、鏡の前に立った山口さんは「どうもぉ~、こんにちは。私、見かけはダサいおっさんだけど仕事はプロです。お電話で話したケムンパスがまいりました~……」ってやり始めたのです。
「和田さん……。和田さんの言っていたことがわかりました。あのセリフを言うとみんな笑ってくれるんですよ。それからなんかいいムードになるんですよね」
しばらくすると、彼がこんなことを言ってきたのです。