だから為政者は「安心安全のために行動規制をかけます」となってしまうのです。そうなると、再び打撃を受けるのが飲食・観光等の特定の産業の方々です。ようやく年末年始で明るい兆しが見え始めて令和4年は明るい年になるぞ、と気持ちとやる気が高まっていたのに…と嘆いている方も多いでしょう。

 もう一度言いますが、重傷者数も少なく、死者数に至ってはオミクロン株による感染者ではゼロと言われている中で、もしもここで経済活動の足かせをするようなことになれば、それこそまた自殺者が増えることになるでしょう。まさにオミクロン株によってではなく、政治判断によって亡くなる方の方が増えるという結果になるのです。

重症者数や死者数を重視し
冷静な政治対応を

 でも、政治にそういう判断をさせてしまうのは「冷静さのない国民」であり、そのことは深刻に受け止めなければなりません。

 ではどうやって冷静さを保てば良いのか。答えは簡単です。全体的な数字を見て客観的な現実を見つめようということです。

 もはや感染者数に一喜一憂するのではなく、先ほどからしつこく申し上げている「重症者数」「死者数」を最も大切な指標に置くことが肝心だと思っています。国民の命を守るということは「風邪をひかせない」のではなくて「風邪をひかせても命を落とさせない」ことです。そのためには死亡率が低い(もはや死亡者がない)のに感染者数を追い求めることに何の意味があるのでしょう。

 さらに、これを海外の数字のそれと照らし合わせることも重要になります。政府レベルでは確実にその数字を把握し、判断していることと思います。マスコミも毎日必ず、お得意の「感染者数」だけではなく「重症者数」「死亡者数」、それと海外との比較を出すべきです。いくら政府が安全を訴えても、マスコミが国民をあおるような報道をしていては永遠に悪循環から脱することはできないでしょう。

 この2年間、日本は世界のコロナ優等生だと私は思っていました。客観的に見てもそうでしょう。それでも「対策がダメだ。日本政府は能力が低い!」という批判をされてきたのだから菅前首相はお気の毒でした。だから、羹(あつもの)に懲りて膾(なます)を吹くという言葉のように「デルタ株に懲りて、オミクロン株をビビる」ことのないように、1億総「冷静」社会を目指していただきたいと切に願うものです。

(元衆議院議員 宮崎謙介)