営業マネジャー時代の失敗経験

―― 差し支えなければ、ご自身の失敗経験を教えてください

 すぐに思いつくものでしたら、私が営業マネジャーだった頃、部下が3~4人いたときの話です。

 そのなかの一人はMVPを取るような成績優秀な人だったんですけど、一人は全然ダメなメンバーでした。

 あまりに成績が出せずに、私ともしょっちゅう喧嘩みたいな言い争いになっていました。私の言うことなんてまったくきかないんです。

「何で彼は成果が出せないんだ」と当時私は思っていたんですが、あるとき、その彼が隣の部署に移ったんです。

 そしたら、移った翌月に隣の部署でMVPになったんです。

 それを聞いたときは、正直「うわっ」と思いました。とにかくショックでした。

 それで隣の部署のマネジャーに「どうやって彼を成長させたのか」を聞いたら「彼のことを認めて、自由にやらせた。ただそれだけだ」って言うんです。

 それを聞いたときは、本当に衝撃を受けました。

 その瞬間は「なんで俺の部署では成績出さないんだよ!」と思いましたけど、冷静になって振り返ってみれば、私のやり方は完全な管理型で、自由なんてまったく与えていませんでした。

 本当にショックな失敗でしたけど、でも、あの経験があるおかげで、自分のマネジメントを見直すことができて、「スーパー管理型」から脱却できたのだと思います。

「あいつには期待しているのに…」という上司の9割は『期待』を言葉で伝えていない

―― 今の曽山さんを見ていると、管理型のマネジャーだったなんて想像もつかないですけどね。

 いやいや、スーパー管理型でしたよ。

 今でも、ときどきメンバーからは「曽山さんの指摘が怖いときがある」「細か過ぎることがある」と言われてますけど(笑)

 でも、そうやってフィードバックしてもらうことも大事ですし、何より「失敗事例」が自分にはあって、それを新しいリーダーやマネジャーに話すことができる。それのほうが大切だと思っています。

 私だってこんな失敗をしてるんだから、あなたも思い切ってやってみたらいいよ。

 そんなことを事例を伴って話せるかどうか。

 組織にとって、非常に大切なことだと思います。

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「あいつには期待しているのに…」という上司の9割は『期待』を言葉で伝えていない

曽山哲人(そやま・てつひと)
株式会社サイバーエージェント 常務執行役員CHO
1974年神奈川県横浜市生まれ。上智大学文学部英文学科卒業。1998年伊勢丹に入社、紳士服部門配属とともに通販サイト立ち上げに参加。1999年、社員数が20人程度だったサイバーエージェントにインターネット広告の営業担当として入社し、後に営業部門統括に就任。2005年に人事本部設立とともに人事本部長に就任。2008年から取締役を6年務め、2014年より執行役員、2016年から取締役に再任。2020年より現職。著書は『強みを活かす』(PHPビジネス新書)、『サイバーエージェント流 成長するしかけ』(日本実業出版社)、『クリエイティブ人事』(光文社新書、共著)等。ビジネス系ユーチューバー「ソヤマン」として情報発信もしている。
2005年の人事本部長就任より10年で20以上の新しい人事制度や仕組みを導入、のべ3000人以上の採用に関わり、300人以上の管理職育成に携わる。毎年1000人の社員とリアルおよびリモートでの交流をおこない、10年で3500人以上の学生とマンツーマンで対話するなど、若手との接点も多い。

「あいつには期待しているのに…」という上司の9割は『期待』を言葉で伝えていない