サイバーエージェントは「2020年『20代の成長環境がある企業』ランキング」(エン・ジャパン調査)でも第4位に輝いています。
そんな会社で2005年から採用や人材育成のトップとして組織を活性化させてきた曽山哲人氏。
曽山氏は「若手には期待をかけることが大事」と語る一方で、
「それを言葉で伝えているリーダー、マネジャーが本当に少ない」と指摘します。
若手が奮起したくなる「期待の伝え方」とはどういうものなのか。
若手のチャレンジを後押しする「失敗を認める文化」を組織に育むとは、どういうことなのか。
昨年末の発売直後から「新しい若手育成のバイブル」として圧倒的な支持を集めている『若手育成の教科書』の著者でもある曽山哲人氏に「若手育成のカギ」について詳しく話を聞いた。
(取材・構成/イイダテツヤ、撮影/増元幸司)
「あいつには期待してる」は、たいてい本人に伝わっていない
―― 『若手育成の教科書』では「期待」がとても重要な要素として語られています。ただ、上司やマネジャーからは「あいつには期待しているのに、なかなか奮起してくれない」という嘆きもけっこう耳にします。そのあたり、曽山さんはどのように考えているんでしょうか。
これは非常に簡単です。ほとんどが「言ってない」ですね。
―― 言ってない? どういうことですか?
「あいつには期待してる」と思っていても、その期待を言葉で本人に伝えていない。ただ勝手に思っているだけ。その状態がほとんどです。
「あいつには期待してる」という話はたしかによく聞きますけど、それを「言っていない」ことで伝わっておらず、部下も期待されていることに気づいてない。これもよくある話です。
だから私は「どう伝えているんですか?」と聞くようにしているんです。すると「えっと、確かに伝えたことがなかったです」と気づくケースがとても多い。
まずは明確に言葉にして伝えましょう。
これが大事です。
―― これ以上ないシンプルな対応策ですね。まずはちゃんと言う。そこからですね。
その通りです。ただし、言うだけでは十分ではないんです。
期待を言葉にして伝えたら、ぜひ「その期待に対して、どう思ってる?」と相手に聞いて欲しいですね。
その際「とても嬉しいです。がんばります」の反応なのか、「それは嬉しいんですけど……私はこっちの方が得意なんです」とか「いや、じつはこういうことをやってみたいと思ってるんです……」のような反応なのか。
ここをしっかりキャッチすることが重要です。
じつは、こうした「ズレ」がかなり生じています。
私は「強みズレ」とか「楽しいズレ」(「楽しい」と思うことのズレ)とも表現していますが、大きく言えば「期待ズレ」です。
―― たしかに「期待ズレ」はありそうですね。期待されることは嬉しい。「でも、そこじゃない」みたいな。
そうです、そうです。ものすごくありますよ。
期待しているなら、それを伝えることがまず大事。
ただし、伝えたとしてもズレが生じていたら、これまたやる気につながりません。
本人のやる気につながらない期待に関しては「上司の要望を伝えているだけ」のパターンもよくありますね。
―― どういうことですか?
「君には、今の営業成績の150%を上げて欲しいと思っている。期待してるぞ!」みたいなやつです。
―― なるほど。数字に関する要望というか、上司の願望を言っているだけ
数値目標を落としているだけ。純粋な意味での期待ではないです。
もちろん、本人が「会社から数字を求められたら、それだけ燃える」「150%の売上目指してがんばります!」というタイプなら全く問題はありません。
本人のエモ(感情)に寄り添っている期待になり得ますから。
そういう意味でも、期待を伝えたときには「それについてどう思う?」と確認することが大事なんです。
期待を伝えて「期待ズレ」が起こっていないかをていねいに確認する。
リーダーやマネジャーにとって大事なコミュニケーションだと思います。