失敗事例のない会社では
「失敗を認める文化」は育まれない

―― 『若手育成の教科書』では「期待をかける」の他に「失敗に関する話」も大きく取り上げられています。

 たしかにそうですね。組織のなかに「失敗を認める文化をどれだけ作れるか」もめちゃくちゃ重要なポイントですから。

 そもそも若手が成長するためにはチャレンジが必要で、チャレンジしやすい文化を作るためには「失敗を認めること」が不可欠です。

 そこで重要なのが、組織のなかに「どれだけ失敗の事例があるか」です。

「あいつには期待しているのに…」という上司の9割は『期待』を言葉で伝えていない

―― 事例ですか?

 そうなんです。いくら「ウチは失敗を認める会社です」「セカンドチャンスがあります!」と言ったところで、事例がなければ、絶対にそうした文化は生まれませんし、根付きません。

 口で言うだけだったら、当然みんな嘘だと思いますよね。

 15年前、私が人事本部長になったとき、会社のミッションやバリューが10個くらいあったんですね。そのなかに「失敗した人にセカンドチャンスを」という文言があったんです。

 それで「サイバーエージェントはセカンドチャンスがある会社」との認識がどのくらいあるのかアンケートを取ってみたところ、「ある」と答えた人は2割しかいませんでした。

 8割の人は「セカンドチャンスなんてない」と思っていたんです。

 そこで、組織にどんな失敗事例があるのかをヒアリングして、集めようと思ったんですが、全然集まらない。

 それもそのはずで、当時は会社としてもバンバン新しい会社を作ったり、事業を始めたりして、失敗もめちゃくちゃしていたんですが、その人たちはバンバン辞めていたんです。

 これでは組織のなかに失敗事例があるわけがありません。

 だから、それからは失敗した人たちともていねいに面談をしたり、フォローアップするようにしました。いろんな状況や思いを掘り下げて、次につながるような体制を作っていったんです。

 そうやって失敗した人をフォローしたり、次のチャンスを得られるようにしていくと、当然、その人たちが後に成功していくんです。

 そのときになって初めて「あの失敗があったから、今がある」と語ってくれる。

 それが組織のなかにある「失敗事例」です。

 失敗事例のない会社は、いくら「失敗を認める」と言っても実態がなく、何も伝わってはいきません。

―― 曽山さん自身にも失敗事例があるってことですか?

 もちろんあります。たくさんありますよ。