20代が「ここで働きたい!」と思う会社が大切にする、今の若者の「損得勘定」とは?

サイバーエージェントの人事トップとして、採用や育成を牽引し続けている曽山哲人氏。
サイバーエージェントは「2020年『20代の成長環境がある企業』ランキング」(エン・ジャパン調査)でも第4位に輝いています。
サイバーエージェントは、どのようにして若手を育て、若い人たちから「働きたい」と思われる会社となったのか。
今、すべての管理職やリーダー、マネジャーが知らなければならない「人材領域のメガトレンド」とは?
曽山氏が語る「若い人たちを育てる上で、意識しなければならない“3つのE”」とは何なのか。
今回は、2021年末の発売直後から「新しい若手育成のバイブル」として圧倒的な支持を集めている『若手育成の教科書』の著者でもある曽山哲人氏に「若手育成のカギ」について詳しく話を聞いた。
(取材・構成/イイダテツヤ、撮影/増元幸司)

会社のやっていることは全部、バレている

―― 『若手育成の教科書』はタイトル通り「若手の育成」について詳しく書かれた本ですが、最近の若い人が「こんな会社で働きたい」を思うのはどういう会社なのでしょうか。

 若い人に限りませんが、そもそも人は損得勘定で「損」だと思うとなかなか動かないですよね。

 だから、会社としても「得」だと感じられるようにすることは大事なんです。

 ただし「何が損得になるのか」。

 この「損得勘定」の中身を知っておくことが大切で、若い人たちの価値観は従来とは大きく変わってきていると感じます。昔は「金銭の部分」が大きかったですが、今は「感情、エモーショナル」の比重が高くなってきている。そんな変化は強く感じます。

 特に若い人はその傾向が強いですね。

 若い人のエモの部分にいかに訴えられるか。

 そんな会社が求められているとは思います。

 ちなみに、私は人材領域のメガトレンドとして3つのキーワードを挙げていて、それぞれの頭文字を取って「3つのE」と呼んでいるんです。

―― それは興味深いですね。ぜひその“3つのE”を教えてください。

 1つ目は「exposure(エクスポージャー)」【さらけ出す】。
 2つ目は「esteem needs」(エスティーム ニーズ)【承認欲求】。
 3つ目は「emotion reward」(エモーション リワード)【感情の報酬】です。

 たとえば採用においても、この3つをきちんとやっている会社は採用力が高まり、これに気づいていない、あるいはやっていない会社は採用力が下がっていきます。

 そんなメガトレンドを示すキーワードだと思います。「メガ」は言い過ぎかもしれないですけど(笑)。

 1つ目の「エクスポージャー」は、簡単に説明すると「全部、バレてますよ」ということ。

 サイバーエージェントの最終面接に曽山が登場して、最後にどんな質問をしたか。それを密室でやっていたとしても、LINEにある匿名オープンチャットやサイバーエージェントに関する就活掲示板などでは、すべてオープンになっています。「こんなことを聞かれて、こう答えたら、こう切り返されたよ」なんて話は全部バレてるんです。

20代が「ここで働きたい!」と思う会社が大切にする、今の若者の「損得勘定」とは?

―― たしかに、そうですね。

 就活だけでなく、組織の中で起こっている出来事やコミュニケーションもすべてそうです。パワハラやセクハラも全部バレてしまうじゃないですか。

 録音した音声はあるし、スクショも撮られている。「これ、いったいどうやって流出したの?」と驚くような内容が平気で週刊誌に出る時代です。

 とにかく、今はすべて暴かれちゃう時代。

 ところが、それをわかっていないリーダーがまだいるということです。

 たとえば、若い人に対して理不尽に厳しいことを言う。

 厳しいことを言うのは決して悪くはありませんが、それがハラスメントっぽいことである場合、リーダーは密室でのやりとりだと思っているのですが、そんなことは絶対ない。すべて暴かれてしまいます。

 どんなときも、その意識を忘れてはいけないと思います。

 ただし、これはマイナスだけでなく、組織の中でどんなことが大事にされているか、リーダーがどんな言動をしているか、採用面接で何が、どんなふうに行われているか、プラスの面も含めすべて暴かれていくので、その部分が評価され、多くの人から「働きたい」「働き続けたい」と思われることも当然あります。

 そういう会社は、自ずと採用力も上がり、いい人材が集まってくる。

 有名な大手企業でなくても、創業から数年も経っていないスタートアップでも「いい会社だ」との評判が広まれば、素晴らしい人材がいくらでも採用できるようになります。

 これは一つの傾向だと思います。