また日本の輸入の25.7%は中国からで、この中には日本企業が現地生産で作っている部品や商品、材料があり、それらも入らなくなる。日本から台湾への輸出は6.9%、輸入は4.2%を占め、中国ほどではないが、それも戦乱で停滞する可能性がある。

 企業の倒産、閉鎖が続発して失業者が増え、不況が連鎖的に拡大する恐れが大きい。

 こうした打撃が予想される中で、日本は「台湾有事」のリスクを負う合理性、また正当性はあるのか。

日中共同声明で認めている
台湾は「中国の不可分の一部」

 今年は、72年9月29日に田中角栄首相と周恩来首相が日中共同声明に調印し、国交正常化が果たされて50年の記念行事が行われるはずだった。

 この共同声明は、「日本政府は中華人民共和国政府が中国の唯一の合法政府であることを承認する」とし、「中華人民共和国は、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する。日本国政府はこの中華人民共和国の立場を十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第8項に基づく立場を堅持する」とうたっている。

 また78年10月23日に園田直外相と中国の黄華外相が調印した日中の「平和友好条約」は、「72年の共同声明に示された諸原則が厳格に遵守されるべきことを確認し」と再確認している。

 共同声明に従えば、中国と台湾が、独立か統一かを巡って戦争になったとしても「内乱」にすぎず、日本が台湾に加担するのは「唯一の合法政府」に対する反政府武装勢力を支援することとなり、条約違反になってしまう。

 日本の憲法98条は「日本国が締結した条約及び確立された国際法規はこれを誠実に遵守することを必要とする」と定めているから、台湾の独立支援は憲法違反と考えざるをえない。

 これについて防衛省の見解を求めると、「省内で協議したが何ともお答えできない。外務省に聞いていただきたい」との回答だった。

「防衛政策上重要な問題だから見解表明を避けるわけにはいかないのでは」と言っても「よく分かりませんので」との答えだ。

 外務省の担当幹部は「日中共同声明、平和友好条約にある通りだが、いろいろ事情によるところもありますので」と、はぐらかすしかないようだ。