Be in the right environment to use English regularly.
ポイント2「英語を使わざるを得ない状況をつくり出す」

「英語を使う環境を、どうやって確保するのかを考える必要がある」と麻也さんが言うように、「使える英語」を身につけるためには、実際に使うことが不可欠です。

「英語を使う環境を確保する」というと、「海外に住むことが必要」とか、「海外に住んでいない自分は無理」と考えるかたがいます。しかし、海外に住んでいるからといって、自動的に「英語を話す環境」が手に入るわけではありません。

サッカー日本代表の吉田麻也さん

 通訳人がつねに傍らにいたため、海外生活が長いにもかかわらず自分で英語を使う機会がなく、日常会話レベルで止まっている人もいます。長年、日本に住んでいるけれど、日本語が話せない外国人エクゼクティブも大勢います。「外国に住んでいる」イコール「その国の言葉を話す環境が整っている」ということではないのです。

 麻也さんは若くして海外に渡り、サッカー選手として活躍していますが、通訳をつけたことがありません。多国籍の人が集まり、多言語が入り混じるヨーロッパでは、サッカー選手が通訳をつけることはまれなため、麻也さんも「仲間に受け入れられるためにも」通訳をつけることはしませんでした。

 また、日常生活においても、身の回りのことは人に任せずに、すべて自分でこなすことで英語を使わざるを得ない環境をつくったといいます。たとえば、イギリスで奥さんが出産することになったため、「陣痛」「帝王切開」といった、出産に関係する英語をあらかじめ覚えておきました。

 任せられるところは人に任せて、サッカーのプレーのみに集中すればそれはそれで楽かもしれないけれど、あえてすべて自分でこなさなければならない状況をつくり出すことで、コミュニケーションのアンテナを、より高く、より広く、張ることができると麻也さんは言います。

 サッカーをプレーするためにチームメイトとの人間関係を構築しながら、生きた英語を身につける状況を、自らつくり出していることがうかがえます。

Have a means to make up your English ability.
ポイント3「英語環境でサバイブする術(すべ)を持つ」

 一方、英語を使わざるを得ない状況をつくり出したとしても、当然、自然に英語が話せるようになるわけではありません。「生きた英語」を身につけるためには、英語環境でサバイブする工夫も必要です。

 麻也さんが英語で本当に苦しんだのは、意外にも、初めての海外生活であるオランダよりも、イギリスに住み始めたときでした。多くの日本人は「アメリカ英語」を学ぶため、ネイティブ英語の国であるイギリスの英語に戸惑うという話はときどき聞きます。

 麻也さんもイギリスに住み始めたときには、「茄子(ナス)」をアメリカ英語の「eggplant」ではなく「aubergine」と呼ぶなど、自分が知っている「英語」とは異なる言葉が使われていることに戸惑ったといいます。さらには、日常会話だけでなく、サッカーで使われる英語も、オランダとイギリスでは異なることに気づきます。

 そこで麻也さんがおこなったことは、最低限必要な英語を確実に覚えることでした。特に、ピッチ内で使うサッカーの言葉は「たたき込む」ことで、練習や試合に対応したといいます。

 とはいえ、複雑な英語が飛び交うミーティングでは、さすがにすべてを理解することは難しい。そのため、ミーティング中に「わからない」と感じたことはきちんと覚えておき、後からチームメイトに内容を確認することで、理解力を補いました。

 よく、「効率よく英語を勉強するにはどうしたら良いですか?」と相談を受けることがあります。効率を求めるのであれば、私は何よりも「自分に必要な英語に集中すること」をお勧めしています。

 英語の学習書で、「これだけ覚えれば大丈夫!頻出単語○○選」といったものをよく見かけますが(こうした書籍を用いて勉強することは無駄とはまったく思いませんが)、あくまで他者が選んだ単語であり、また、一般的な頻出単語です。どれほど優れていても、麻也さんのように自分にとって必要な最低限の言葉に絞って覚えることにはかなわないのです。

 効率的に学ぶということは、「自分が使える英語を身につける」ということです。そのためには、本当に自分に必要な英語を見極め、そこにフォーカスして覚えていくことがベストです。

 母国語ではない言語を習得するには当然、長い時間がかかります。私がプロとして20年以上、通訳の仕事をして感じることは、「いくら学んでも、母国語ではない言語をネイティブ並みに完璧に使いこなせるようになることはない」ということです。

 とはいえ、英語は使わなければ上達しません。麻也さんの例で言えば、練習や試合に必要な英語は確実に「たたき込む」努力をした上で、ミーティングで理解できなかった英語は後から調べる。今の自分の英語力を最大限に生かしつつ、英語力で足りないところがあれば、それを補完するための方法を見つけて、とにかく英語を使い続ける。それが大切なのです。