うまく機能すれば仕事の効率が上がり、ストレスも減少へ
――タスクの実行日を決めるというお話でしたが、その日の中で各タスクを実行する時間を決めたり、あるいは手を付ける順番を決めておいたりする必要はないのでしょうか?
水口 これもルーズさが必要、という話とつながりますが、どの時間にどのタスクをやる、という細かいところまで決めるのって、手間がかかりますよね。それに、予定外の仕事が入ったときには、予定がどんどんずれこんでいくことになるので、それもまた厄介。場合によっては、スケジュールを組み直さなければならなくなり、さらなる手間が発生します。
ですから、その日に実行するタスクを羅列しておくだけで十分。優先順位に関しても、前もって決めておく必要性はないので、実行日の朝に考えればいいでしょう。
――初めてタスク実行日の計画を立てる場合、どこまでゆるくすればいいのか、というバランスが難しいかもしれません。
水口 そうですね。まずタスクの実行日の計画を立て、それをしばらく実行してみた後、結果の“振り返り”という作業も必要不可欠だと思います。もし、予定どおりにタスクが終わらず、翌日以降への繰り越しが連日続いてしまう状態なら、計画段階でタスクを詰め込み過ぎているので、見直したほうがいい。経験上、このタイムマネジメントを初めて実践する人は、タスクを詰め込み過ぎる傾向が強いので、最初は少なめに入れるくらいでちょうどいいです。
あとは、タスクをこなすのにどれくらいの時間がかかったか、それぞれのタスクが終わった時点で自分のスケジュール上に記録しておくのもおすすめです。すべてのタスクについてきっちり記録するのは大変ですから、ざっくりでOK。5分、10分で終わったことなんかは、無視して大丈夫です。この作業をしておくと「意外とメールの返事をするのに時間を食っているな」などの気づきを得られ、その後のタスク管理をするうえで役立つでしょう。
――実際、水口さんご自身はこのやり方を実践することで、残業を大幅に減らすことができたのですよね。
水口 残業時間を3分の1以下に短縮できました。ですから、仕事量の多いエンジニアにとって効果的であることは、実証済みです。エンジニアに限らず、一人で複数の案件を同時に動かすような仕事をしている人にとっては、大いに効果を発揮するでしょう。私は大企業の研修を手掛けることが比較的多いのですが、中小規模の企業も、社員一人ひとりが多様な業務を任される傾向が強いので、タイムマネジメントによって得られるメリットは大きいと思います。
私自身、タイムマネジメントを実践して特によかったと思うのは、体調面でラクになったことに加えて、ストレスから解放されたことです。以前は、仕事をしている以上、ストレスがあるのは仕方のないことだと思い込んでいました。ですが、タイムマネジメントを経て、ストレスの元凶は仕事そのものではなく、自分の仕事の進め方にあったんだ、ということに気づかされました。