その後パーティーに出席した高官は前述の数人や汚職取締局の責任者も含めて17人、また立法会議員は20人に上り、さらに香港衛生署は最終的な出席者の数は220人以上だったと発表した。それと同時にメディアに流れ始めたパーティー会場の写真では、マスクをせずにおしゃべりをしたり、カラオケに興じたりする出席者の姿が写っていた。

 政府が決めた営業停止措置に泣く泣く従わなければならないビジネス関係者、そして不便を受け入れざるを得ない市民は激怒した。「村官の放火は許されて、庶民は火で暖を取ることも許されないのか」という、中国の古い成語がメディアに飛び交った。

中国につながる要人の誕生日パーティー

 緊急事態が続く中でこれほど多くの高官や立法会議員が集まったパーティーとは、いったい誰の誕生日を祝うものだったのか?

 パーティーの主役は、1969年生まれの全国人民代表大会(全人代)香港特別行政区代表の洪為民氏。実はこの名前、香港市民ですら初めて聞く人がほとんどだった。ただし、耳元では「全人代代表」の肩書だけが響き渡った。つまり、ここでも中国政府に連なる要人に人々が群がったという図式である。さらに衝撃的だったのは「中国のおかげ」で当選した議員だけではなく、政府が新型コロナ対策に大わらわになっていることを知るはずの民政事務局長や汚職取締局トップといった政府高官たちもそこにいたことだった。

 その後、くだんの女性がパーティーに顔を出したのは午後9時以降であることがわかり、それ以前にパーティー会場から去った人たちはPCR検査の陰性証明を受ければ、濃厚接触者リストから外され、強制隔離を免れることになった。だが、その滞在時間の洗い出しでまた困難に直面した。

 昨年から政府が政府庁舎や飲食店、商業施設の出入りの際に義務付けている、アプリ「安心出行」によるQRコードの読み取りを、多くの参加者がしていなかったことがわかったからだ。出入りの際にQRコードを読み込んでいれば、パーティー会場での滞在時間がわかる。だがそれがない場合は……政府は3つの手段で時間を確認したと発表した。それは「高官公用車の運転手の勤務時間表」「パーティー後に向かった施設でのQRコード読み取り記録」「移動に公共交通を使ったケースの交通ICカードに記録された時間」の3つ。政府は「誰」がコード読み取りをしていなかったかの名前は発表しなかったが、この措置から政府高官や議員が含まれていることは明らかだった。