中には、「会場になったレストランの職員がQRコード読み取りを促さなかった」「店頭のQRコードが見つからなかった」などといった言い訳をする議員も出現した。さらには、一緒に出席した妻が一時的に陽性と判断された医師がラジオに出演した際、「なぜアプリを使わなかった?」と尋ねられ、「お前ら、日頃からそんなに法を順守しているのか?」と切り返し、失笑を買った。

「ほら見ろ、結局のところ中国政府にすりよって我が世の春を楽しむ連中なんてこのレベルなんだよ」、そんな声があちこちから聞こえてきた。市民にとって、いまやこの「自分と関係ない世界」で毎日のように演じられる騒ぎは、久しぶりに仲間内に大笑いできる話題になったのだ。

香港の政治トップ、来期は誰になるのかの動きはナシ

林鄭月娥・行政長官 Photo:JIJI林鄭月娥・行政長官 Photo:JIJI

 こうしてみると、林鄭行政長官の威信はガタ落ちであることがわかる。だが、この3月には行政長官選挙が行われる予定で、一部では彼女は続投に意欲的だと伝えられている。

 例年なら今頃は、長官選挙への参選予定者が立候補を前にその意志を表明し、動き始める時期だ。前回の選挙でも林鄭氏は前年の12月末にはすでにその意欲を見せていた。

 だが、今年は林鄭長官、梁振英・前行政長官、葉劉淑儀・立法会議員、陳馮富珍・前世界保健機関(WHO)事務局長などの名前はメディアに上がるものの、今に至るもすべてまだ「噂」レベルにすぎない(先日、ある親中派の人物が立候補に名乗りを挙げたものの、この人物は大勢には影響を及ぼさないとみられている)。あまりの動きのなさにメディアでは「これまでにない“濃縮された”選挙期間になる」とも形容されている。

 林鄭氏と同じ公務員出身で、長年立候補に意欲的だったことで知られる葉劉淑儀議員ですら、「早すぎる行政長官選挙ムード開始によって社会が分裂することを、中央政府は恐れている」などと述べている。もしそれが事実なら、ここでもまた中央政府がすべての手綱を握っており、自分もそれに従っていることを参選予定者自らが公言してみせたことになる。いずれにしても、ほとんどの市民には投票権はないのだが。