どうしても許せないことに直面したときの対処法
マイナスの感情や状態を解消することも重要だ。先に述べたとおり、「〜べき」が裏切られたとしても、強く怒りを感じることもあれば、そうでないときもある。不安、焦り、孤独感などの“ガス”に相当するマイナス感情を小さくすることができれば、怒りの炎を大きく燃え上がらせずに済む。
安藤 夫婦ゲンカのイライラを抱えたまま出社して、目についた部下をむやみに怒鳴るという人がいます。パワハラをする人で家庭がうまくいっている人は少ないと私は思います。怒りの根がどこにあるのかは、一見したところわからないのです。コロナ禍で“怒る人”が増えているのも、ウイルスに感染することへの不安や経済的な不安など、 “ガス”が溜まっているからです。怒りに振りまわされることを減らしたいと思ったら、「マイナス感情」を生み出している自分の問題を解決することが必須です。
生活習慣も価値観も人それぞれであることを知るのが、ダイバーシティ&インクルージョンの第一歩だろう。そうして、多様性を知ったうえで、自分自身が多様性を受け入れ難いこと、多様性を受け入れられない人がいることも多様性の一部と考えるのもアンガーマネジメントのひとつの姿勢かもしれない。ただ、許容範囲が広がっても、許せないことが決してゼロになるわけではない。どうしても許せないことに直面したときに、怒りの感情に振りまわされないためにはどうしたらよいのだろうか。
安藤 たとえば、仕事において、自分の組織の業績が著しく下がったときに、部下をむやみに怒鳴りつける人もいれば、「こういうふうに数字が下がっているから、次からはこうしてくれないか?」と建設的に伝えられる人もいます。大切なのは、まず、その事態が自分にとって「見逃せるのか、見逃せないか」を見極めること。そして、見逃せないと判断したことに対しては、ただ怒りをぶつけるのではなく、「どうしてほしいのか」というリクエストを相手に適切に伝えることです。アンガーマネジメントのトレーニングを積むと、その2点がコントロールできるようになります。