国民の約半数は
首都移転に賛成

 現時点で国民が首都移転に反対一辺倒かというとそうでもない。一定程度受け入れられているという印象だ。実際、これまでの各世論調査では賛成が50~60%台とやや優勢になっている。もし日本で首都を東京から移そうという話が起きたらこうはいかないだろう。この受け入れ具合には、日本とはかなり異なる事情が絡んでいる。

 まず、今回の遷都は大統領宮殿や中央官庁、最高裁など首都の政治的な機能を移動させるもので、金融や商業の中心というジャカルタの地位は維持される。どちらかというとクアラルンプールから近郊プトラジャヤに行政機能を移転したマレーシアの例に近い。移転先として、火山が少ないなど自然災害リスクが小さいという利点もある。

 また、ジョコ大統領が2019年に新首都構想を発表したとき、その理由の一つとして、ジャワ島とジャワ島以外の地域(=外島)のより均衡の取れた発展を挙げた。現状のインドネシアは、国土のわずか6%であるジャワ島に人口も富も集中しすぎているからだ。全人口約2億6400万人の56.6%、そしてGDPの58.5%をそれぞれジャワが占める。東カリマンタンは地理的にインドネシアの中心に位置するので、首都移転は「ジャワ中心主義」からの脱却とみられている。