ヨーロッパの社会に
大きな影響を与えた「4性質説」

 これに対してアリストテレスは、この4元素がいかなる状態になっているかが重要であると考えました。

 具体的には熱・冷・乾・湿の4種の性質の組合せです。

 火の性質は熱と乾、空気の性質は熱と湿、水の性質は冷と湿、土の性質は冷と乾です。

 アリストテレスは、この4性質を森羅万象から人間の性格にまで対応させて、壮大な体系をつくっています。

 彼の4性質説は、エンペドクレスの4元素説以上に、ヨーロッパの社会に大きな影響を与えました。

奇(く)しくも、このアリストテレスが考えた4性質説と中国の陰陽五行説は、たいへんよく似ていますので、本書の中国の諸子百家のところで両者を比較しながらもう一度説明しています。

 加えてアリストテレスは4原因説で、世界を説明しました。

 たとえば机をイデアから説明するのではなく、質料因(木材)、形相因(意匠)、作用因(大工仕事)、目的因(食事)の4つの原因から説明したのです。