世界1200都市を訪れ、1万冊超を読破した“現代の知の巨人”、稀代の読書家として知られる出口治明APU(立命館アジア太平洋大学)学長。世界史を背骨に日本人が最も苦手とする「哲学と宗教」の全史を初めて体系的に解説した『哲学と宗教全史』がついに13万部を突破。「ビジネス書大賞2020」特別賞(ビジネス教養部門)を受賞。発売2年経っても売れ続けるロングセラーとなっている。
◎宮部みゆき氏(小説家)が「本書を読まなくても単位を落とすことはありませんが、よりよく生きるために必要な大切なものを落とす可能性はあります」
◎池谷裕二氏(脳研究者・東京大学教授)が「初心者でも知の大都市で路頭に迷わないよう、周到にデザインされ、読者を思索の快楽へと誘う。世界でも選ばれた人にしか書けない稀有な本」
◎なかにし礼氏(直木賞作家・作詞家)が「読み終わったら、西洋と東洋の哲学と宗教の大河を怒濤とともに下ったような快い疲労感が残る。世界に初めて登場した名著である」
◎大手書店員が「百年残る王道の一冊」と評した究極の一冊
だがこの本、A5判ハードカバー、468ページ、2400円+税という近年稀に見るスケールの本で、巷では「鈍器本」といわれている。“現代の知の巨人”に、本書を抜粋しながら、哲学と宗教のツボについて語ってもらおう。

古代ギリシャ 戦争Photo: Adobe Stock

BC5世紀からBC4世紀に
活躍した哲学者

 なぜソクラテスは、外の世界から内なる心の世界へと、思索の方向を移したのでしょうか。

 その原因は、彼が生きたアテナイの政治状況と決して無関係ではありません。

 人間の考えることは、いつの時代であってもその人が生きていた時代の環境に大きく影響されざるをえないのです。

 BC5世紀からBC4世紀にかけて、ソクラテス、プラトン、アリストテレスが生きた時代のアテナイについて、簡略な年表を下記に掲載しておきましたので、参考にしてください(本書には、古代ギリシャから現代まで100点以上の哲学者・宗教家の肖像を用いて日本人最大の弱点「哲学と宗教」の全史を体系的に語っています)。

【出口学長・週末学び直し特別講義】ソクラテス、プラトン、アリストテレスが生きた時代の人物相関図一挙公開!戦乱の中でソクラテスがずっと考えていたこととは?ソクラテス、プラトン、アリストテレスが活躍した時代のおもな出来事と登場人物
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 ギリシャの都市国家群は、BC5世紀の初頭、3次にわたるペルシャの世界帝国アカイメネス朝(BC 550-BC330)による侵攻をしりぞけました(ペルシャ戦争)。

 その結果、アテナイとスパルタが強力な都市国家となりました。

 全市民を戦士として育成する軍事国家スパルタと、貴族政から民主政へと移行したアテナイと。性格は異なりましたが、2つの都市国家が競い合い対立しながら、ギリシャの覇権を掌握する時代に向かいます。

 特にアテナイでは、民主派の貴族エフィアルテスが市政権限の多くを、貴族の独占から平民の手に委譲させる改革を実現させました。

 そしてエフィアルテスの暗殺後(BC461頃)、その後を継いでアテナイの指導者になったペリクレス(BC495頃-BC429)が、民主政を徹底させます。

 ペルシャとの間に続いていた戦争状態の終結にも努力しました。

 スパルタとも交渉を続け、30年の和約を結んで、無用の衝突を避けました。