しかしアリストテレスは、
きれいに世界を整理しすぎたかもしれない
アリストテレスは、さまざまな学問上の問題を体系立ててまとめました。
しかし、あまりにもきれいに整理し、しかも整然としたロジックが強烈であったがために、それからおおよそ1000年以上も、ヨーロッパの学問はアリストテレスの呪縛から離れられなかった、という側面がありました。
最高の知的権威として批判ができないほどの存在になってしまったアリストテレスの壮大な学問体系から、個々の学問が飛び出していく形で、少しずつ自立していった。
その過程が近世を経て現代にまで続き、西洋の哲学や学問の歴史がつくられていったように思われます。
本書の第4章で取りあげた3人の哲学者はそれぞれ傑出した人物ですが、3人の天才が突然舞台に登場して哲学の世界を刷新したのではなく、当時のアテナイを中心とする時代背景が3人を生んだと考えることが大切であると思います。
アテナイの黄金時代を経験し、民主政を信頼していたソクラテス。スパルタとの戦争に敗れ、アテナイがギリシャの覇者としての地位を失った時代を生きたプラトン。アテナイを含めたギリシャ全域を制圧したマケドニア王国の出身で、アレクサンドロス大王の家庭教師でもあったアリストテレス。その時代背景が、彼らの思想にも大きな影響を与えたと思うのです。
最後にアリストテレスについてもう少し勉強したい人は、『ニコマコス倫理学』(高田三郎訳、岩波文庫、全2冊)や『形而上学』(出隆訳、岩波文庫、全2冊)と『世界の名著8 アリストテレス』(田中美知太郎責任編集、中公バックス)から始めることをお薦めします。
なお、岩波書店から『アリストテレス全集』(全20巻)が出ています。
この本では、哲学者、宗教家が熱く生きた3000年を出没年つき系図で紹介しました。
僕は系図が大好きなので、「対立」「友人」などの人間関係マップも盛り込んでみたのでぜひご覧いただけたらと思います。
(本原稿は、13万部突破のロングセラー、出口治明著『哲学と宗教全史』からの抜粋です)