「新型コロナウイルス感染症の影響でMICEについては非常に大きな影響を受けている。ビジネスモデルについて今後どうなっていくのか、そのあたりが現在の時点では明確になっていない」

「特に昨年夏以降、徐々にMICEが再開されているが、第2波、第3波が続く中で多くが中止となったり、延期を余儀なくされている状況がある」

 MICEとは、Meeting、Incentive Travel、Convention、Exhibition/Eventの頭文字を使った造語で、国際会議を開催できる巨大な会議場や展示施設を指す。

 高橋徹副市長はこの会議で「IRの中核施設はMICEである。世界最高水準のオールインワンMICE拠点を形成することで世界から人を呼び寄せて、日本経済の成長につなげていく、そこで大事になるのが、MICEである」と強調した。

 ところがIR推進局から会議で示されたのは、MICEのうち展示施設の整備面積を開業時に10万平方メートル以上とするのではなく、開業時は2万平方メートル、開業後15年以内に6万平方メートル、そして35年の事業期間内に10万平方メートル以上の計画を立てるという「段階整備」に変更することであり、その方針自体は会議後すぐに公表された。

「部分開業」報道を嫌がるも
「世界から人呼ぶ」展示場は開業時に不発

 ただ、公表前の2月11日に日本経済新聞電子版がこれを「20年代後半に部分開業」と報じたのがよほど気に障ったのか、坂本局長は2万平方メートルの展示場という国の基準を満たして開業することを理由に「いわゆる大阪IRを目指す最終形に向けて、第2期、第3期というような形で成長させていくものと思っている」と強調。高橋副市長からの「部分開業には当たらないということでよいか」との念押しに「その通りである」と答えている。

 言い方はどうあれ、国の基準を大幅に上回る10万平方メートル以上の展示施設を設けることで、高橋副市長の言う「世界から人を呼び寄せて、日本経済の成長につなげていく」という構想が、20年代後半の開業時には実現しないことが、この会議ではっきりした。

 では、開業後に段階整備を進めていくことにどれだけの合理性があるのだろうか。

 そもそも日本にはMICEに相当する大規模展示施設が少なく、11万平方メートルを超える東京ビッグサイトをしのぐ展示場は海外に多い。そのためコロナ前は、インバウンド需要のさらなる取り込みのため、カジノと一体となった巨大なMICE施設の誘致に横浜市や大阪府市などが名乗りを上げた。

 たが坂本IR推進局長も認めているように、コロナ禍で展示場ビジネスは大幅な制限を受けた。さらに、フェイスブックを運営する米国のIT大手メタは、仮想空間でのアバター同士による交流を可能にする「メタバース」に注力していくとしている。

 仮想空間でも人間の五感が限りなくリアルに近い形で再現されれば、展示や交流といった概念が今後、根本的に覆されることになる。坂本局長もこの会議で「オンラインと現実のリアルをミックスしたようなハイブリッド型といわれているMICEが増加傾向にあると聞いている」と語っており、その兆候は明らかだ。