うまい棒の値上げは
案外悪いことではない

 さて、最後に子どもにとって、今回のうまい棒の値上げは良いことなのでしょうか? 実は、経済学的には今回のような駄菓子の値上げは、その世代にとって良い体験になるという説があります。

 私のように子ども時代にオイルショックを経験した世代は、価格を通じて経済に関心を持つように育ちます。一方で今、20代から30代の世代は子ども時代を通じてデフレしか経験していません。そのような環境で子ども時代を過ごすと、なんとなく「価格というものはそれほど変わらないものだ」という感覚を持つことになります。

 これが実は良くないというのです。というのは、確かに過去の30年間については日本経済はデフレ傾向だったかもしれないけれども、これから先はそうではないかもしれないからです。

 若い世代の方が、「給料が安くても、ユニクロや百均、ドン・キホーテで買い物をして生活はそれなりに成り立つ」と考えて生活設計をしていると、ひょっとすると高齢者になったときに生活が成り立たなくなってしまうかもしれない。今の若い世代はそのようなリスクを抱えています。

 一方で、日本で働く外国人の若者は、母国でインフレを経験しています。そこで将来の生活が困らないように老後資産の形成を真面目に考えるようになる。日本に出稼ぎに来て歯を食いしばって日本語を学んでいるのも、子ども時代の厳しい経験があっての差だというのがその説です。

 今の小学生がこの4月、10円玉を握って駄菓子屋さんに出かけたら、「うまい棒は10円じゃ買えないよ。あと2円、持ってくるんだね」と店のおばちゃんに塩対応されるような経験をするとしたら、それは彼らの将来を考えると大切な体験かもしれないというのです。

 ということで、子どもたちには、今日本に起きている値上げラッシュを子どもたちなりに経験して、子どもたちなりに悩んでほしい。今回のうまい棒の値上げニュースはそういう深い話だと私は思うのです。

(百年コンサルティング代表 鈴木貴博)