悪い話ばかりではない「通勤手当の増額」

カタリーナ 「悪い話ばかりでもないわよ。社会保険料を決めるもとになる『標準報酬月額』が上がることで、メリットもあるわ。社会保険は、健康保険と厚生年金保険に分かれていて、それぞれ違った役割があるの。健康保険なら、もし病気で働けなくなったときにもらえる傷病手当金がたくさんもらえるようになる。厚生年金なら、老後などにもらえる年金が増えるってことね」

伊東 「え、そうなんですか? 今の給与が40万円くらいなんですけど、通勤手当がもし毎月15万円になったらどうなります?」

カタリーナ 「今の標準報酬月額が41万円だとすれば、それが56万円になるとして……標準報酬月額が改定されて12カ月以上経過してから受けることになる傷病手当金の金額は、1日約9100円から約1万2400円になるから約3300円増えるわね。1カ月では約10万円の増加よ。年金は働いた期間の全てが対象になるから単純に計算はできないけれど、保険料の半分を会社が出してくれるから大きいわ」

伊東 「ちなみに、社会保険料はどのくらい上がるんでしょうか?」

カタリーナ 「そうね、健康保険組合によっても違うけれど、協会けんぽ東京支部の場合は月7400円くらい上がるわ。厚生年金と合わせたら約2万1000円アップね。これと同額以上の社会保険料を、あなたのために会社が毎月支払ってくれるってことよ」

伊東 「そうか…、まぁその分手取りは減ったとしても、生活費がだいぶ安くなるからなぁ」

カタリーナ 「厚生年金の標準報酬月額は65万円が上限だから、それ以上になっても年金が増えるってことはないの。あなたの場合はその範囲内だから、保険料の半分を会社に負担してもらいながら年金額を増やせる、という考え方もできるわね」

伊東 「なるほど。保険料を取られることばかり考えて損すると思っていたけど、そういうことだけではないのですね」

カタリーナ 「ただ、通勤手当がコンスタントに出ない場合、社会保険料は毎月の給与に応じて変動するわけじゃないから、手取りが減ってしまうこともある。社会保険料は、毎年4月から6月までの平均給与で、その年の9月分から1年間の額が決まってしまうから、特に注意したいわね。それと、固定的賃金に変更があって標準報酬月額に大幅な変動があった場合などは、随時改定といって社会保険料が見直される仕組みもあるわ」