通勤手当の影響が「育児休業給付金」にも!?

カタリーナ

カタリーナ 「あと、通勤手当の増額は、雇用保険の保険料や給付金にも影響してくるわ。毎月天引きされる雇用保険料は、通勤手当を含めた総額で計算されるの。月15万円増えると450円、22年10月からは保険料率が上がる見込みだから750円増えることになりそうね。ただ、『育児休業給付金』や『失業手当』と言った給付金の算定にも通勤手当が含まれるから、もらえる額も増えるってわけ」

伊東 「えっ? そうなんですか。2人目もそろそろ…と思っていたんで、今度は僕も育児休業を取りたいと考えているんですよ」

カタリーナ 「それはいいわね。ただ、給付金には上限があるの。育児休業給付金の場合、休業開始前の6カ月の平均給与で計算することになるけれど、この休業開始時賃金が45万600円(※注)を超えると、それ以上は変わらないの。育休開始後の半年は給付率が67%だから、最大で月30万1902円が育児休業給付金としてもらえる額になるわね。それでも、あなたの場合は月額で約3万4000円増える計算になるわ」
※注 2022年2月現在。毎年8月1日に見直しが行われる。

伊東 「なるほど。それはラッキーだな」

カタリーナ 「育児休業という話が出たからついでに言っておくと、育休中は社会保険料の免除制度があるの。月の末日に育休を取っている場合や、22年10月からは同月内に14日以上の育休を取っている場合は社会保険料が免除されるのよ。さらにその間、社会保険料を支払ったものとして、年金額を計算してもらえるの」

伊東 「へぇ~。通勤手当が、こんないろいろなところまで関係してくるとは、考えてもみませんでした。参考にさせてもらいます!」

<カタリーナ先生のワンポイント・アドバイス>
●在宅勤務、テレワークなどで、従業員が一時的に出社する場合の交通費については、基本的に、当該労働日における労働契約上の労務の提供地が自宅か事業所かに応じて、それぞれ以下のように取り扱うこととされている(出所:2021年4月1日「『標準報酬月額の定時決定及び随時改定の事務取扱いに関する事例集』の一部改正について」から)。

(1)当該労働日における労働契約上の労務の提供地が自宅の場合
労働契約上、当該労働日の労務提供地が自宅とされており、業務命令により事業所等に一時的に出社し、その移動にかかる実費を事業主が負担する場合、当該費用は原則として実費弁償と認められ、「報酬等」には含まれない。

(2)当該労働日における労働契約上の労務の提供地が事業所とされている場合
当該労働日は事業所での勤務となっていることから、自宅から当該事業所に出社するために要した費用を事業主が負担する場合、当該費用は、原則として通勤手当として「報酬等」に含まれる。
なお、在宅勤務・テレワークの導入に伴い、支給されていた通勤手当が支払われなくなる、支給方法が月額から日額単位に変更される等の固定的賃金に関する変動があった場合には、随時改定の対象となる。

●育児休業給付金は、原則として、育児休業開始前6カ月間の賃金を180で除した額(休業開始時賃金日額)を用いて計算する。各支給単位期間の支給額は、「休業開始時賃金日額×支給日数×67%(育児休業の開始から6カ月経過後は50%)」となる。ただし、支給限度額は、67%の場合30万1902円、50%の場合22万5300円となる(~2022年7月31日まで。毎年8月1日に支給限度額は見直される)。

※本稿は一般企業にみられる相談事例を基にしたフィクションです。法律に基づく判断などについては、個々のケースによるため、各労働局など公的機関や専門家にご相談のうえ対応ください。

(社会保険労務士 佐佐木由美子)