地元発のカフェチェーンへ、投資マネーが流れ込む

 こうした背景のもと、数年前からインドネシアではこれまでの伝統的なワルン(=個人経営店舗)とは一線を画す、地元発のカフェチェーンが相次いで誕生した。ちょうど、少し前に中国で非現金決済方式のスタンド型店舗を展開したラッキンコーヒーが資金調達を重ねて大化けしたように、インドネシアでもカフェチェーンへの投資マネーが次々と流れ込んでいる。

 中でも一番の成長株が「コピ・クナンガン」(クナンガンはインドネシア語で「思い出」)。2017年創業にもかかわらず、約600店舗を構えており、これはスターバックスの487店舗をも上回る(2021年10月現在)。「Kopi Kenangan Mantan」(元カレ/元カノの思い出コーヒー)という風変わりな名前が付いた看板メニューで知られ、大学生など若者層が気軽に寄れるような値段設定で人気になっている。2019年には米国人ラッパーのJay-Zが出資、昨年12月には東南アジアで初めて飲食業界からのユニコーン企業となった。

 その他にもインドネシアでは今、「コピ・ジャンジ・ジワ」「コピ・クロ」などたくさんのカフェチェーンが雨後のたけのこのように相次いで創業中だ。InstagramなどSNSを使ったプロモーションをテコに、急拡大を続けている。この一大カフェブームの波に乗って、マクドナルドなどの外食チェーンも積極的にカフェを併設するようになった。

 2017年には、家具商出身で知られるジョコ大統領が家族を連れだって「コピ・トゥク」というカフェを訪問し、「このようなローカルブランドの成功に感謝する」と持ち上げたのも話題になった。官民一体でプッシュしていると言っていい。